
多くの人にとって、家づくりは人生の大きな節目です。効率よく、コストを抑えて家を建てたいと考える中で、「プレハブ住宅ってどんな家?」「実際の費用はどれくらいかかるの?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
プレハブ住宅は、あらかじめ工場でつくられた部材を現場で組み立てる住宅のことで、短工期・安定した品質・コスト削減が期待できる住まいとして注目されています。近年では、デザイン性や省エネ性能に優れたモデルも増え、子育て世帯や共働き家庭にも人気です。
本記事では、プレハブ住宅の基本的な仕組みや構造の違い、価格相場、メリット・デメリット、後悔しない選び方のポイントまでを分かりやすく解説します。プレハブ住宅について正しく理解し、理想の住まいを実現する第一歩にしてください。
おしゃれで人気のある「プレハブ住宅」ってどんな住宅?
住宅の購入を検討しているとき、雑誌やインターネットなどで「プレハブ住宅」という文字を見かけることがあります。人によってはプレハブ住宅を災害時の仮設住宅のような、一時的な用途の住宅と思っている人がいるかもしれませんが、それはプレハブ住宅のほんの一面に過ぎません。実は、テレビCMや住宅展示場などで見かける大手ハウスメーカーのブランド名がついた住宅も、その多くはプレハブ住宅なのです。

プレハブ住宅は工場で生産〜組み立てを行う建築工法
「プレハブ」とは、プレファブリケーション(Prefabrication)の略で、工場であらかじめ部材を製造・加工し、それを現場で組み立てる建築方法のことです。プレハブ住宅は、工場でつくられた部品を現場で組み立てるため、短期間で施工できるのが特徴です。この方法は、仮設住宅や仮設事務所など、短期間だけ使う建物によく採用されています。
プレハブ住宅の着工戸数
令和6年(2024年)に発表された国土交通省による「建築着工統計調査報告」では、新しく建設されたプレハブ住宅は合計で9万3082戸でした。これは、新設住宅全体の11.7%に相当します。
構造別に見ると、新設プレハブ住宅の内訳は以下のとおりです。
| 構造 | 戸数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 木造 | 1万673戸 | 11.5% |
| 鉄筋コンクリート造 | 2880戸 | 3.1% |
| 鉄骨造 | 7万9529戸 | 85.4% |
このデータから、プレハブ住宅の中でも鉄骨造が最も多く建築されていることがわかります。
※出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和6年計)」
構造・工法が異なる4つのプレハブ住宅
プレハブ住宅は、構造・工法によって、大きく4つに分けることができます。それぞれの特徴は次の通りです。
【鉄鋼系プレハブ住宅】
鉄骨の柱・梁(はり)に壁パネルを用いるなど、鉄骨を主要構造部材とするプレハブ住宅です。柱・梁・けたなどを軽量形鋼等で構成し、壁・床パネルを張り付ける軸組方式と外壁パネルに構造耐力を負担させるパネル方式などがあります。また、柱や梁を重量鉄骨で構成するラーメン工法もあります。

【木質系プレハブ住宅】
木材によるパネルなどを主要構造部材とするもの。木製の枠組みの両面または片面に合板等を貼ったパネル(接着する場合もある)を、耐力壁に用いる工法です。パネルは床や屋根にも用いることができます。

【コンクリート系プレハブ住宅】
工場生産されたプレキャストコンクリート(PC)の壁や床・屋根パネルを主要構造部材とするもの。壁板の幅が900mm程の中型コンクリートパネル工法と、壁板の幅が、より大きい大型コンクリートパネル工法があります。

【ユニット系プレハブ住宅】
鉄骨のフレームや木材のパネルで構成されたBOX型の箱(ユニット)を工場で生産し、それを建築現場で組み付けて完成させるものです。外壁や外部建具だけでなく、間仕切壁や内部建具なども工場で取り付けることが可能で、工場生産化率を飛躍的に高めた工法です。

他の工法とプレハブ住宅の違い
主な住宅の工法には、プレハブ工法の他に次の工法があります。
- 木造軸組工法(在来工法)
- 2×4工法(ツーバイフォー)
- RC造(鉄筋コンクリート)
それぞれの工法には設計の自由度や工期などの面で特徴があります。ここでは、他の工法による住宅の特徴をご紹介した上で、それらと比較したプレハブ住宅のメリット・デメリットをご紹介します。
木造軸組工法(在来工法)による住宅の特徴
木造軸組工法は、在来工法とも呼ばれる日本の伝統的な住宅工法です。この工法の特徴は、設計の自由度の高さにあります。筋交いの入った壁でなければ開口部を自由に設けることができ、狭小住宅や変形住宅にも柔軟に対応できる工法です。
2×4工法(ツーバイフォー)による住宅の特徴
断面サイズが2×4インチの角材を使うことから「2×4(ツーバイフォー)工法」と呼ばれています。2×6インチ材を使う「2×6工法」も同じ種類の工法です。正式には「木造枠組壁工法」といいます。床や壁、天井の「面」で建物を支える住宅工法で、構造の安定度が高いのが特徴です。また、構造的に気密性や断熱性にも優れています。部材や施工方法が公的な基準によってマニュアル化されているので、施工会社による設計品質のバラツキが小さいのも特徴の一つです。
RC造(鉄筋コンクリート)による住宅の特徴
RCはReinforced Concrete(補強されたコンクリート)の略で、鉄筋コンクリートのことです。RC造には壁式構造とラーメン構造という2種類があり、どちらも現場で鉄筋を組み、型枠をはめてコンクリートを流し込んで壁や柱をつくります。耐火性・耐震性・耐久性が高いという特徴がありますが、工期は長く、コストも高めです。

プレハブ住宅の値段は?価格相場を紹介
2024年度の「住宅着工統計」(国土交通省)によると、プレハブ住宅の1㎡あたりの工事予定額は、全国平均で約34万円でした。例えば、延床面積が35坪のプレハブ住宅を建てる場合、建築費用は約3941万円が目安となります(※)。
ただし実際の費用は、建築地や建物の仕様・設備グレードによって変動します。また、土地代や外構工事、地盤改良費などが別途かかる場合もあるため、総予算で検討する際にはある程度の余裕を見込んでおく必要があります。
プレハブ住宅は、他の工法に比べて特別に安いというわけではありませんが、工場での部材生産による効率化によって、工期の短縮や人件費が抑えられ、予算や引き渡し時期の見通しが立てやすいといえます。
(※)参考:国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計 年度次 2024年度」第35表 単位を㎡から坪に変更し、計算
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プレハブ住宅のメリット
プレハブ住宅は短工期やコストの抑制以外にも、工場生産による安定した品質や、精密な施工などさまざまなメリットがあります。具体的な内容は次の通りです。
1.品質が均一で高精度
プレハブ住宅の部材は、温度や湿度が一定に保たれた工場内で製造するため、品質や精度が均一な部材を使用できます。
例えば、屋外で木材などを加工する現場施工のように天候や気候に左右されることがないため、部材の反りやゆがみ、接合制度のバラつきが抑えられるでしょう。また、部材の加工はコンピュータ制御の機械によって行われるので、人為的なミスが少なく、mm単位での精密な加工が可能です。
コンピューター、ロボットなど最新技術を導入した工場において徹底した品質管理のもとで主要部材が生産されるので、品質が均一で、高精度の住宅をつくることができます。
2.高品質の施工
先述のように、プレハブ住宅は工場であらかじめ精密に加工された部材を現場で組み立てるので、施工の不手際が起きにくく、現場での品質も安定しやすいのが特徴です。
他の工法の場合、現場施工では職人の技術力や工法の難易度によって仕上がりに差が出ることもありますが、プレハブ住宅は規格化された部材を用いることで、現場経験が少ない人でも一定以上の品質が保たれやすくなります。
在来工法では現場で行われる作業の多くが、プレハブ工法では工場で行われ、部材は標準化、規格化されているので、建築現場での作業も簡単に、しかも高品質の施工が実現できます。
3.工期の大幅な短縮
プレハブ住宅では、工場で加工された壁や床を現場で組み立てていくため、施工期間を短縮できるのも大きなメリットです。
例えば、一般的な在来工法では4〜6カ月かかる工程を、プレハブ住宅なら最短で2〜3カ月に圧縮できるケースもあります。できるだけ早く新居に住み始めたい方には適した選択肢といえるでしょう。
工場生産にウェイトを置いているため、在来工法のように職人の技能に左右されることが少なく、現場作業が軽減されて工期が大幅に短縮されるため、マイホームへの早期入居が可能になります。
4.コスト低減を実現
プレハブ住宅は、部材や工程の規格化によってコストパフォーマンスに優れた住まいが実現しやすいのも特徴です。
部材を大量生産することで単価を抑えられるほか、現場での施工期間が大幅に短縮されるため、人件費の削減にもつながります。さらに、工場での精密な加工により、現場での部材ロスや施工の不手際が発生しにくく、無駄なコストを抑えられる効果もあります。
また、工場生産方式のため原価管理が明確になり、価格は常に適切に設定されます。そして、資材購入方式から生産設備、現場施工などに合理化が行われているため、トータルコストの引き下げが図られています。
5.付加価値のある技術・性能
大手ハウスメーカーによる継続的な技術開発により、先進的な技術や性能を手軽に取り入れられる点も、プレハブ住宅の大きな魅力の1つです。例えば、オリジナルの工法や特殊な加工法、塗装など、現場施工では実現しにくい付加価値のある技術・性能を工場生産で実現しているハウスメーカーも多数あります。
在来工法では同じ仕様を実現できなかったり、建築費用が高額になるケースも珍しくありません。そのため、住宅の性能や建材にこだわりたい人にとって、プレハブ住宅はコストと品質のバランスに優れた選択肢といえるでしょう。
6.高性能を実現
プレハブ住宅は、耐震性や省エネ性を備えた高性能な住まいが実現しやすい点も魅力です。
例えば耐震性の場合、どれだけ設計レベルで強度があっても、基準を満たした施工がなければ本来の性能を発揮できません。しかし、プレハブ住宅のように、各部材を工場で生産し品質を均一に保つことで、設計通りの構造性能を確保することが可能です。
さらに、断熱性や気密性に優れた仕様や、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準をクリアした高性能な住まいにも対応しやすいという特徴があります。
耐震、省エネ、温熱環境、災害時にも住み続けられる(レジリエンス性)など、顧客ニーズに応じた高い性能を実現しています。
プレハブ住宅のデメリット
プレハブ住宅は部材が一定の寸法(モジュール)で規格化されており、間取りや敷地条件に応じたカスタマイズの自由度がやや限定されます。また、着工後の間取り変更が難しく、追加費用が発生しやすいため、設計段階で要望を明確にし慎重にプランを練ることが重要です。
カスタマイズしにくい
プレハブ住宅は、完全自由設計の注文住宅と比べるとカスタマイズの自由度が限定される傾向があります。基本的な間取りや外観デザインについてはある程度のバリエーションから選べますが、「一からつくる」ような設計は難しいケースが多いです。
特に敷地面積が狭くて変形地である場合や、外観・間取りに強いこだわりがある場合には自由度が低いといえるでしょう。
設計に制限がかかる可能性がある
プレハブ住宅では、構造体や部材の寸法があらかじめ規格化されていることが多く、設計に一定の制限がかかる場合があります。用意されたプランの中から選ぶ規格住宅やセミオーダー住宅が一般的で、細かい部分のカスタマイズには対応できないこともあります。
特に、変形地や狭小地への柔軟な対応が難しいケースも珍しくありません。独自性のある家づくりを重視する場合には、自由度の高い在来工法などが適していることもあるでしょう。
着工後の変更が難しい
プレハブ住宅は、着工後の変更が難しいという特性もあります。施工前に詳細な設計が完了しているので、工事が始まってから間取りや仕様の変更を行うと、全体のバランスが崩れたり、品質にバラつきが生じるリスクがあるでしょう。
仮に対応できる場合でも、特別な処理や追加費用が発生する可能性があるため、設計段階で家族のライフスタイルを見据えた十分な検討が必要です。
将来的に増築やリフォームが難しい可能性がある
プレハブ住宅は、将来的な増築や大幅なリフォームが困難なケースもあります。
例えば、「子ども部屋を増築したい」「壁を取り払って広いリビングにしたい」といった要望に対して、構造上の制約や接合部の都合で対応できないことがあるでしょう。また、部分的にリフォームできたとしても、プレハブ特有の仕様に合わせた工事となるため、費用が割高になったり、仕上がりに制限が出たりすることも考慮しておきましょう。
将来的なライフスタイルの変化に備えるなら、間取りの柔軟性や可変性を持たせたプランを最初に検討しておいたほうがいいでしょう。
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プレハブ住宅を選ぶときのポイント
プレハブ住宅を選ぶ際は、プランや構造・工法が自分たちのライフスタイルに合っているかを見極めることが大切です。
例えば、鉄鋼系か木質系かにより、それぞれ特徴が異なります。また、ハウスメーカーによって住宅の性能面や施工の品質、対応できるアフターメンテナンスにも差があるため、そうした違いをよく理解し、自分たちに合った選択が求められます。
理想のプランに合わせて構造・工法を選ぶ
プレハブ住宅を選ぶ際は、理想のプランに合わせて構造や工法を選ぶことが重要です。
木造・木質系プレハブ住宅
木造・木質系プレハブ住宅は、自然素材を活かした温かみのあるデザインが特徴で、心地よい住環境を求める方に適しています。
鉄骨系プレハブ住宅
鉄骨系住宅は大きな開口部が設けやすく開放的なデザインが可能で、耐震性にも優れているため、地震などの自然災害に強いというメリットがあります。
コンクリート系プレハブ住宅
コンクリート系住宅は耐火性や防音性が高く、長寿命で安心して暮らせる点が魅力です。
ユニット系プレハブ住宅
また、ユニット系は工場でユニットごとに製造されるため、工期短縮が可能で、迅速に施工を進めたい場合に向いています。
各構造・工法にはコスト面や工期の違いもあり、木造・木質系プレハブは比較的コストを抑えやすい半面、工期はやや長めです。鉄骨やコンクリート系プレハブは耐久性が高い半面、コストが上がる傾向にあります。これらを踏まえ、予算やライフスタイルに合った最適な選択をしましょう。
断熱性や省エネ性を確認する
プレハブ住宅を選ぶ際は、断熱性や省エネ性にも注目してください。特に重要なのが、住宅の外皮性能を表す「UA値(外皮平均熱貫流率)」です。これは、屋根・壁・窓などから逃げる熱量の平均を示したもので、数値が小さいほど断熱性能が高いことを意味します。
また、国が定めた「省エネルギー対策等級(省エネ等級)」が高い住宅は、冷暖房効率に優れ、年間の光熱費削減にもつながるのが特徴です。これらの数値はカタログや説明資料で確認できることが多いので、比較検討の際にはぜひチェックしておきましょう。
アフターメンテナンスの内容を調べておく
プレハブ住宅は部材を工場で生産するため、メーカー保証やアフターの定期メンテナンス体制が整っているケースが多く見られます。ただし、定期点検の内容や保証範囲、サポート体制はハウスメーカーによって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
地震や台風など自然災害時の緊急対応や、将来的なリフォームに対するサポート体制の有無などもチェックしておきたいポイントです。保証やサポート内容が充実していれば、長期的にも安心して住み続けられ、先々の暮らしにも備えることができるでしょう。

スーモカウンターでできること
プレハブ住宅は、ハウスメーカーによって扱う構造・工法が異なります。また、同じ構造・工法を扱う会社も複数あるため、どこに頼めばよいか迷ってしまうかもしれません。
そんなときは、ぜひスーモカウンターに相談をしてみましょう。スーモカウンターでは、たくさんの依頼先の中から予算や希望に合った会社を複数ピックアップして紹介しています。
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イラスト/いぢちひろゆき・長岡伸行
取材・執筆/福富大介(りんかく)、SUUMO編集部(プレハブ住宅は工場で生産〜組み立てを行う建築工法/プレハブ住宅の着工戸数/プレハブ住宅の値段は?価格相場を紹介)