下がり天井は、空間にアクセントが生まれホテルライクな雰囲気が演出できると、インテリアにこだわりのある人には人気です。そこで、下がり天井のメリット・デメリットと、上手な使い方について、アーキテックプランニングの永井香織さんに話を伺いました。
下がり天井とは
「普通の天井高よりも部分的に低くなっている天井を下がり天井と呼んでいます。その部分だけ色や素材を変えたり、照明を設置したりするケースが多いですね。マンションの場合は、梁やパイプスペースなどを隠すために採用することが多いのですが、注文住宅の場合はデザインとして採用するケースがほとんどです」(永井さん、以下同)
下がり天井のメリットは?
空間にアクセントが付けられる
「広い空間の一部に、天井の高さはもちろん、色や素材感の異なる天井があることで変化が生まれ、アクセントになります。これが最も大きなメリットではないでしょうか」
空間を曖昧に区切ることができる
「壁や間仕切りがなくても、空間を曖昧に区切ることができる点もメリットの一つです。広いLDKの一部を下がり天井にして、キッチンとリビング・ダイニングを区切るような場合によく用いられます」
落ち着いた雰囲気を演出できる
「下がり天井の部分を暗めの色にすると、落ち着いた雰囲気になります。また、下がり天井と合わせて設置するケースの多い、ダウンライトや間接照明も、雰囲気づくりに一役買っています」
下がり天井のデメリットは?
圧迫感を感じることも
「広い面積で下がり天井になっていると、圧迫感を感じることもあります。例えば標準の天井高が2.4mで、そこから30cm下げると、下がり天井の天井高は2.1mです。その下に背の高い男性が立つと、圧迫感を感じるかもしれません。
下がり天井にする場合のおすすめの天井高は、最低でも2.1m。2m以下だと圧迫感を感じるでしょう」
掃除が大変
「高い位置にあるため掃除はしづらいですね。また、下がり天井に間接照明を入れている場合は、ホコリがたまりやすいため、定期的なお手入れが必要です」
建築コストが高くなる
「下がり天井にするために造作が必要になるので、普通の天井よりはコスト高になってしまいます。当社の場合ですと、仕上げにもよりますが、キッチン部分だけの下がり天井3.31m2(畳2畳相当)で、数万円のコストアップです」
下がり天井の活用プランを紹介!
実際に下がり天井を採用することで、部屋の雰囲気はどのように変わるのでしょうか?
上手な使い方とともに、アーキテックプランニングが手掛けた下がり天井の事例を見てみましょう。
【実例1】キッチンからダイニングに続く直線ラインを意識した下がり天井
キッチンから、横に並べたダイニングテーブルの頭上まで続く下がり天井です。幅は90cm前後ですが、長さは4.5mあり、直線のラインを意識したスマートなデザインとなっています。
キッチンの調理する人が立つ場所は、通常の天井高を確保しているため、下がり天井のデメリットである圧迫感が軽減されています。ダウンライトと間接照明を設置して、落ち着いた大人な雰囲気を演出しています。
【実例2】フローリングや柱との統一感を意識したナチュラルテイストの下がり天井
LDKのキッチン部分だけを下がり天井にした例です。下げ幅を多めに取っているため、天井の存在感が際立っています。フローリングや柱と色・明るさを統一した木目調にすることで、部屋全体のナチュラルな印象が強調されています。
柱と下がり天井部分の木目は、天然木ではなくクロスを使用することで、見た目の印象を損なうことなく、コストの調節を図っています。
【実例3】曲線がエレガントな雰囲気を醸し出す下がり天井
LDK全体を落ち着いた色味でまとめて、シックな印象に仕上げています。さらに、その天井の一部に、曲線でデザインした下がり天井を設け、ダウンライトと間接照明でライティングすることで、エレガントな雰囲気を醸し出しています。
【実例4】壁面の収納と色を合わせ、キッチンとの調和を図った下がり天井
キッチンからダイニングまでを下がり天井にした例です。壁面の木目調の収納と同系色のクロスを貼り、統一感を出しました。アイランドキッチンのコンクリート系の色合いとも調和が取れています。また、調理する人が立つ頭上は通常の天井高にして、圧迫感を感じさせないデザインになっています。
【実例5】ダウンフロアとの組み合わせで変化に富んだリビングルームの下がり天井
リビングルームのコーナーを下がり天井にした例です。広いリビングの一部を曲線デザインの下がり天井にして、間接照明を付けました。リビングの床がダイニングより一段下がったダウンフロアになっているため、より空間に変化が生まれています。
【実例6】直線のラインが強調されたリビングの下がり天井
リビングルームの一辺に設けた直線的な下がり天井の例です。間接照明によって直線ラインが際立つデザインに。床のフローリングと通常の天井が同系色の木目調のため、しつこい印象にならないように、下がり天井部分はシンプルな白にしています。
【実例7】間接照明のやわらかな明かりを求めて設置した下がり天井
主寝室に下がり天井を採用した例です。寝室に下がり天井を設ける場合、間接照明を入れたいという理由のことがほとんどです。やわらかな明かりが快適な睡眠を導いてくれそうです。
【実例8】寝室のワンポイントアクセントとなる下がり天井
実例7と同様に主寝室に下がり天井を採用した例です。一般的に寝室は、部屋全体がのっぺりとした印象になりがちですが、下がり天井を設けることでワンポイントのアクセントを付けています。ただし、寝室自体が広いスペースではないため、下がり天井の面積も控えめにしています。
下がり天井を採用して理想の住まいを実現した先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、下がり天井を採用して理想の住まいを実現した先輩たちの事例を紹介します。どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、事例を参考に学んでいきましょう。
【case1】こだわった広いLDKのアクセントに、下がり天井を採用
広いLDKにこだわりのあったSさん。大空間を得意とする会社と出会い、理想通りの広々としたLDKを実現しました。余裕のあるスペースに置かれたアイランドキッチンの上部には、下がり天井を採用。木目のブラウンと間接照明が、大空間のアクセントになっています。
この実例をもっと詳しく→
広くて天井が高く開放的なLDKと 便利な水まわり動線をかなえた家
【case2】吹抜けの開放感をより際立たせるキッチンの下がり天井
LDKのリビングに設けた吹抜けを見て、夫が「ここまで高いとは思いませんでした」というほどの開放感あふれる家。一方、リビングと続くキッチンの上部には、下がり天井。このコントラストが、さらに吹抜けの開放感を演出しています。
この実例をもっと詳しく→
駅遠ながら住環境を優先。吹抜けのリビングを2歳の娘が干し芋を持って走り回る“圧迫感”がない家
【case3】リビングを囲む下がり天井にキッチンの下がり天井をプラス
6人家族が集う広いLDKに設けた下がり天井は、リビングをぐるりと囲む間接照明が効いて、おしゃれな空間になっています。キッチンの上はさらに一段下げた下がり天井にして、アクセントクロスを張りました。キッチンのマットなブラックと調和が取れてシックな仕上がりです。
この実例をもっと詳しく→
お互いの生活音を気にせず、6人が快適に暮らす二世帯住宅
下がり天井を採用するときのポイント
最後にあらためて永井さんに、下がり天井を採用するときのポイントを聞きました。
「一口に下がり天井といっても、デザインによって雰囲気は異なります。どのような下がり天井が希望なのか、建築会社の担当としっかり打合せをしましょう。
下がり天井にして後悔する人の多くは、デザインのイメージが違ったという人と、思ったより圧迫感があったという人です。どのくらい下げると、どの程度圧迫感があるかは、身長にもよりますし、人それぞれ。体感してみないと分からないところもあるので、できればモデルルームなどに出向き、実際に見てみることをおすすめします。
また、下がり天井の施工は、意外と技術が必要なので、実績のあるところに依頼するのが、間違いないでしょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「下がり天井が得意な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/株式会社アーキテックプランニング
取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/村林タカノブ