職業柄、「よりよいもの」や「よりよい環境」を求める方が多いエンジニア。そんなエンジニアの「家づくり」にはきっと、さまざまなこだわりが詰め込まれているはず。
注文住宅を選んだエンジニアに登場いただく「エンジニア、家を建てる」。第1回はcorocn(土屋貴裕)さんに寄稿いただきました。
5年前から岐阜県でリモートワークを続けているcorocnさん。お子さんの誕生をきっかけに建てた家には、何かと忙しい共働き夫婦ならではの「時短」への工夫が施されています。
岐阜でソフトウェアエンジニアをしているcorocnと申します。
5年ほど前から地元の岐阜でリモートワークをはじめ、今は東京の Leaner Technologies というスタートアップ企業にフルリモート勤務しています。妻と2歳の息子の3人で暮らしており、子育てをきっかけに家を購入しました。
今回はエンジニアならではの観点も含め、フルリモートワーカー・共働き・子育て中の私がどんな視点で家を建てたのかを紹介できればと思います。
わが家の「スペック」
- 竣工年月:2021年1月
- 家族構成:3人(夫婦 + 子ども)
- エリア:岐阜県岐阜市
- 最寄り駅まで:徒歩15分
- 土地、建物の広さ:土地204㎡(61.71坪)、建物(延床)120㎡(36.3坪)
- 部屋数:4SLDK(2階建て)
- 価格帯:3,500万円〜4,500万円
- 住宅ローンの借り入れ先:地方銀行(変動金利型)
〜 私の家づくり3カ条 〜
🏠 理想の間取りの実現には「いかに効率よくこちらのイメージを伝えられるか」が重要
🏠 育児中の共働き家庭に心の余裕をつくる「時短家電」導入を想定してプランを組む
🏠 仕事部屋(書斎)は「カスタマイズ」を前提とし、あえてこだわらない
【目次】
なぜ「注文住宅」を選んだのか
もともと岐阜市内の賃貸マンションで妻と暮らしていましたが、子どもが生まれてから手狭になり、賃貸での育児に限界を感じていました。
妻と相談したところ「買っちゃってもいいのでは?」という結論になり、インターネットで物件を調べ始めました。
そうして始まった物件探し。フルリモートワーカーとして働き続けることを想定すると、最低でも仕事部屋、寝室、子ども部屋×2 にLDKを加えた4LDKは必要だなと思っていました。
しかし、当時は新型コロナの感染拡大前でリモートワークもあまり浸透していなかったので、マンションも分譲住宅もだいたい3LDKで仕事部屋を想定していない間取りが多く、絶妙に希望にマッチしない物件ばかり。
中古リフォームという選択肢もあったのですが、希望の間取りにフルリフォームするとそこまで安くならないということが分かったので、新築の注文住宅がベストという結論になりました。
細かいポイントですが、岐阜は車社会なので駅近マンションよりも少し離れた場所のほうが渋滞せず便利ですし、在宅勤務のために安定したネット回線を引くことを考えても一戸建ては最強です。
あと、土地に余裕があると広い庭がゲットできるのでやりたい放題できます。
都心部の方からするとマンションに比べて「一戸建て」はハードルが高いように思われるかもしれませんが、岐阜にはそもそもマンションが少なく、東京に比べると土地代も安いため「一戸建て」を選択する人が多いのです。
上記の理由で、東京都心に住んでいるエンジニアと家トークをしたときに話が噛み合わなかったりしますね。
情報収集と土地探しは「希望エリアに住みながら」がはかどる
家を建てるにあたり、インターネットでの情報収集や住宅展示場の見学は誰もが通る道だと思います。
しかし、私達は注文住宅を建てた友達の家を訪問したり、子どもとの散歩ついでに近所の一戸建てをチェックしては好みの外観のハウスメーカーを調べたりしていました。
実際に注文住宅に住んでみてどうかのリアルな声が聞けますし、「このメーカーにお願いするとこういうテイストの家になるんだな」という具体的なイメージも湧きやすいので、オススメです。
土地に関しては市外にある私の実家付近も検討したのですが、夫婦共働きを維持するためにはある程度中心部にいないと難しい(妻の働き口がない)と考え、最終的には2年ほど住んでいた当時の賃貸物件の付近で探しました。
実際に住んでみて非常に住みやすいエリアということがわかっていたのと、土地勘もあるので、お買い得な土地が市場に現れたときに迷わず先手で「買い」を入れることができたのは大きなメリットでした。
そのため、土地を探し始めて3カ月ほどでいい物件に巡り合えたのですが、これはかなり運が良かったほうだと思います。
なかなか難しいかもしれませんが、気になっている地域があれば「一度住んでみる」が一番だなと思います。
土地の決め手は「駅からの距離」と「都市ガスが使えること」でした。
駅から徒歩15分、車だと信号がないので3分で駅まで行けて、名古屋駅までだとドアツードアで30分。東京まで2時間ちょっとの距離感です(えっ、意外と近い……とよく驚かれます)。
この距離感だと土地価格とリセールバリューのバランスが良いですし、月1、2回の東京出張が発生しても応えられるので、仕事の選択肢が広がります。
そして、夫婦で料理が好きなので家を建てるならキッチンは「ガス」と決めていました。特に共働き家庭においては、ガス乾燥機などの時短家電の選択肢が増えるので、オール電化より「ガス」がオススメ(後で詳しく紹介します)。
しかし、地方だと都市ガスの供給エリアは限られていて、プロパンガスもまだまだ主流(これも東京の人には伝わりづらいかも)。そのため、プロパンガスに比べてコストが低い「都市ガス」に対応している土地かどうかは、わが家にとって重要なポイントでした。
エンジニアはローンが組みづらい。わが家は「地方銀行」を選択
ローンは地方銀行 + 変動金利で借りています。
もともと、エンジニアはローンが組みづらい状況にあると思っています。なぜなら、転職前提でキャリアアップしていくので、勤続年数の少なさがネックになるから。
さらに自分の場合は育休を取得していたため、審査に使う“源泉徴収の額面”が実際の収入よりも低くなってしまい、ネット銀行は一切通らず、住宅メーカー経由で地方銀行の利用を検討しました。
ネット銀行と比べると多少金利は上がりますが、悪くない条件の商品も多く、私のように地方で「リモートワーク」「育休」のような新しい働き方を実践していることに、良い印象を抱いていただけたようでした。
また、仮審査の段階でかなり確度の高い結果がでるので、本審査が通らなかったらどうしよう……と悩む心配がなかったのも良かったです。
そして住宅ローンは生命保険としての役割があると思っているので、がん団信(団体信用生命保険)付きのローンを選びました。高いと思うか低いと思うかは人それぞれだと思いますが、わが家の場合は医療職の妻に精査してもらい、決めました。
金利に関しては変動金利か固定金利で悩まれる方が多いと思いますが、繰り上げ返済前提の計画で、ある程度リスクが取れる状況にあったので、変動金利にしています。逆に金利が上昇したらすぐに家計が破綻するような状況であれば、固定金利にしていたと思います。
自分たちの「理想の間取り」をいかに効率よく伝えるか
わが家は私がリモートワーカーなので仕事部屋の確保が必須だったのですが、当然、面積を増やすと価格も増えていくため、ギリギリの面積に要望を詰め込むべく非常に悩みました。
設計士さんがプランをつくってくれるのですが、打ち合わせの時間内に要望を伝えきるのがなかなか難しく、加えて、伝えた結果のフィードバックが1〜2週間後になるため、リードタイムの長さに疲弊してしまい……。
そこで、間取図を作成できるWebサービスを利用して、自分で軽く図面を作成し、設計士さんに見せて要望を共有した上で提案してもらい、さらにプランを練り直して……という方法で間取りを詰めていきました。
最終的に自分で30図面ほど作成しましたが、設計士さんとの効率的なコミュニケーションに役に立ちました。
間取りを考えるにあたりこだわったのは、流行っていたり、定番であったりしても、自分たちの生活スタイルに合わないものは採用しないこと。分譲住宅によく見る例だとバルコニー、和室がそうですね。
バルコニーに関しては、賃貸時代からドラム式洗濯機を使っていて、屋外で衣類を一切干していなかったので採用しませんでした。掃除が大変ですし、メンテナンスコストもかかりますしね。
新居ではさらに利便性を向上させるため、ドラム式洗濯機に加えてガス乾燥機の「乾太くん」を設置しました。
ドラム式と比べると乾燥時間が圧倒的に短く、子どもが布団を汚してしまった場合もサッと洗濯&乾燥してリカバリできるので、子育て世帯には非常にオススメ。構造がシンプルなので故障しにくいというメリットもあります。
和室は単純にわが家には不要だと感じたので、そのスペース分キッチンを広くし、キッチン横にパントリーと、洗面脱衣所に衣類用の収納スペースを確保しました。
このおかげで洗濯→乾燥→収納をほぼ移動することなく完結できる動線が完成し、家事効率が向上しました。
パントリーは階段下のスペースをうまく活用して、冷凍庫と日本酒冷蔵庫を設置する前提で設計。念願のコストコ買いだめができるようになったのと、お酒もたくさん常備できるようになったので、酒豪の妻が大変喜んでいます。
玄関にはファミリークローゼット兼、上着やかばんをしまえる「ただいまクローゼット」を設置しました。出掛けるときにわざわざ2Fのクローゼットまでコートを取りに行く必要がないので、とても便利です。
最終的にキッチンを含め1Fも2Fも回遊できる間取りになったのですが、行き止まりをつくらないと非常に移動しやすいです。正直、間取りを考えるときは家事動線まで詰めきれておらず、これは住み始めてから気付いたうれしい誤算でした。
「家族と過ごす場所」と「時短」を何より重視
1FのLDKは家族と一番長く過ごす空間だと考え、いかに心地よい場所にするかという点にこだわりました。
まずはリビング。もともと大きな窓の家に住みたいと思っていたので、LDKは大きな窓を入れて開放感を出しつつ、断熱を強化するためトリプルガラスに。
LDKは木のぬくもりを感じられるようにしたかったので、床材は天然木ながらも高性能な朝日ウッドテックの「Live Natural Premium RUSTIC(オーク)」、窓にはTOSOの桐製ウッドブラインドを選びました。
どちらもネットにある画像を見ても施工イメージがわかりにくく、ウッドブラインドは施工写真がないと言われたので最終的にえいやと決めましたが、いい感じに仕上がって満足しています(かなりドキドキでした)。
そして、家の中で最もこだわったのがキッチンです。
熱い鍋やフライパンなどを気にせず置きたいと考え、ワークトップには耐久性も高いステンレスを採用しました。
横幅を270cmとかなり広めにしたので調理スペースが広く、作業効率が上がりました。
さらに、60cmの大型食洗機を入れました。鍋や魚焼きグリルのパーツも入るサイズなので「洗い物が面倒」という制限がなくなり献立の幅が広がりました。何かと忙しい共働き家庭ですが、楽しく料理ができています。
G7000シリーズは洗剤の自動投入機能がありますが、カートリッジのコスパが少し悪いのでわが家では使っていません。ちなみに、油ものが少なければ洗剤を入れずともしっかりきれいになります。
ミーレは予熱で乾燥させるシステムなので、国産の食洗機と比較して「乾燥機能がない」ことに悩む方も多いかと思います。ただ、1年使ってみた感じでは「予熱乾燥で十分」です。
それに食器によってはどうしても水たまりができてしまうものなので、サッと使える布巾をキッチンにたくさん用意しておくのが良いと思います。
背面のカップボードも横に長くして、時短家電をたくさん並べられるようにしました。レンジとオーブンを別で置けるのはすごく便利。
最近はどんどん便利な家電が出てくるので、すでに持っている家電+αのスペースを確保しておくと良さそうです。
まだまだスペースは余っているので、時間に余裕ができたらコーヒーメーカーを買ってみたいなと思ってます。
また、1F、2Fともにルンバで掃除ができるように、できるだけ段差をつけずフラットな空間にしました。小上がりをつけたくなる気持ちもわかりつつ、「時短」を重視するならフラットが断然楽ですね。
家具もルンバが掃除しやすいよう、脚の高さなどを考慮して選びました。
ただ、もともと写真の位置に置く想定ではなかったのと、完全に電源位置を失敗していて、コードの見栄えが悪いのは反省点……。
仕事部屋はあえてただの「箱」にしてカスタマイズしやすく
続いて書斎(仕事部屋)を紹介します。
リモートワーカーなので書斎にはこだわりがあるんじゃないの? と思われそうですが、ただの箱部屋です。
エンジニアは自宅の作業環境にこだわっている方が多く、自分もその一人。便利な機材で仕事環境をカスタマイズしていくために、あえて「造作」をしていません。
最近だと電動昇降デスクがトレンドになっていますが、造作で机をつくってしまうと置くスペースがなくなってしまいますからね。
もちろん、わが家も昇降デスクを採用していて、Flexispotの脚フレーム + DIYで用意した天板のデスクを用意して仕事をしています。棚もDIY。
デスクが2台あるのは、仕事用とゲーム用ですね。リモートワークだとついつい働き過ぎてしまうので、頭を切り替えられるようにしています。
仕事環境的な話の文脈で、ネット環境についても触れておきたいなと思います。
住宅メーカーによって標準の有線LANのスペックがまちまちなので、希望のスペックがある場合は事前に確認しておくほうが良いです。メーカーによっては工場で電線とLANケーブルをガチガチに結合させて施工するらしく、あとでLANケーブルだけ取り替えるのが難しいケースもあります。
わが家はカテゴリー6a(10Gbps)にアップしつつ、新しく配線が必要なケースを考えてCD管(電線管)を各部屋に通しておきました。ただ今後は有線よりも無線でつなぐのが常識になるのと思うので、そこまで気にする必要はないかもしれませんね。
そして、意外と盲点なのがルーターやハブの置き場。4LDKぐらいの賃貸だと大型のルーターを1つ家の中心に置けば全部屋とベランダもカバーできますが、一戸建ての場合はどの辺りに配置するか事前に決めておいたほうが良いでしょう。
情報分電盤の位置によっては大型のルーターは設置できないので、スペースをちゃんと確保しておくと配線もすっきりします。私の場合は仕事部屋の横に納戸をつくって、その中に情報分電盤を配置、ルーターは納戸の上にそのまま置いてあります。
注文住宅で生まれたスペースの余裕は、生活の「余裕」になる
最後に外構のこだわりを。将来、子どもの自転車を駐輪することも意識してカーポートを設置しました。
柱の位置がイマイチだったので梁を延長して門柱と一体化させたところ、ちょっと高級感が出ていい感じに。
ウッドフェンスは柱だけ業者の方に建ててもらい、塗装と施工はDIYしてコストカットしています。
時短にこだわる共働きの夫婦の家、いかがでしたか。
スペースに余裕があると普段の家事や子育てがノンストレスになり、その分の余力で仕事や勉強に打ち込めるようになったので、注文住宅にして良かったと思います。
この記事が、注文住宅を検討されているエンジニアの参考になれば幸いです。
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● 料理が好きだから「キッチン」にこだわりたい!
著者:corocn
岐阜で暮らしているソフトウェアエンジニアです。スタートアップでのプロダクト開発が本業ですが、インターネットではエンジニア採用や育児の話をすることが多いです。
Twitter:@corocn
編集:はてな編集部