家を建てるなら、広々と開放的なリビングにして、ゆっくりくつろぎたいと憧れる人は多いでしょう。開放感のある家を建てるにはどのような間取りにしたらよいのか、内装に加えてインテリアのポイントなどをモレスの家の古谷雄一さんに聞きました。開放感のある家の実例も多数紹介します。
住まいに求められる「開放感」とは?
開放感のある家の魅力
住宅における開放感とは、ぱっと開けていて広々とした雰囲気を感じられる空間であることをいいます。開放感にこだわると、家族全員がのびのびと心地よく暮らすことができるほか、住宅全体のデザイン性もアップします。
「家に開放感を取り入れたいときに大切にすべきポイントは、開放的な部分と閉鎖的な部分のバランスです。空間全体が開放的であると、実はそれほど広々とした印象にはなりません。閉鎖的だったり狭かったりする空間を意図的に設え、開放的に見せたい空間と対比構造にすることでより開放感を味わうことができるのです」(古谷さん、以下同)
開放感を感じる要素とは?
住宅における開放感には大きく分けて2つの種類があると古谷さんはいいます。
「1つは空間演出による開放感です。例えば、狭い廊下を抜けて広々としたリビングに出たときに感じる開放感がこれにあたります。また、内装の色や採光などで空間を広く見せたり、中庭をつくって視線の抜ける先をつくるのも空間演出の手法です。2つ目は、物理的広がりによる開放感で吹抜けや天井の構造によって実際に空間を広げる手法です」
開放感を感じる要素について、1つずつ解説していきましょう。
広さや高さの対比
「狭い空間と広い空間、高い天井と低い天井といったように、空間の広さや高さの対比によって開放的であると感じることができます」
色
「白を基調とした明るい色を壁紙に取り入れると空間の広がりを感じやすくなります。一方で、ネイビーやブルーグレーなど寒色系の色は奥行きを感じさせるので、アクセントクロスなどに採用すると効果的です」
明るさ
「日光がたくさん入る明るい空間ほど開放感を感じることができます。明るさで開放感を出したい場合、窓の大きさや数、屋外へと繋がる間取りがポイントとなります」
物理的な空間の広がり
「吹抜けをつくって上下に広がりをもたせたり、リビングから繋がるデッキを設けて空間に横の広がりをつくったりするのも効果的です。また、勾配天井や折り上げ天井など天井の構造を工夫することもおすすめです」
建築段階から考えたい開放感のある間取りのポイント
折り上げ天井にする
天井の中心部分をくぼませて、他の部分よりも高く仕上げる折り上げ天井。空間のアクセントになり開放感を演出できるため、リビングや寝室に取り入れるのが人気です。工事費用がそこまで高くないことも人気の理由の1つです。
「折り上げ天井は、それほどコストをかけずに家の中に開放感を出したいときにおすすめの手法です。空間にリズムが生まれ、デザイン性の高い部屋になるでしょう」
折り上げ天井についてもっと詳しく
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勾配天井にする
傾斜をつけた天井のことを勾配天井といいます。屋根の形状を活かして平屋の天井や2階の空間に用いられるケースが多いです。
「天井の全体に傾斜をつけるよりも、フラットな部分をつくりつつ、斜めの部分を取り入れていくスタイルがおすすめです。平らな部分があることで斜めの部分が際立ち、より開放感を出すことができるためです」
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吹抜けをつくる
吹抜けとは、上階に床をつくらず上下に広がりのある空間のこと。光を効果的に取り入れることができるので、明るい空間になるというメリットもあります。
「吹抜けをつくる場合は空間全体を吹抜けにするよりも、ポイント的に吹抜け構造にするほうが空間にメリハリが生まれます。また、吹抜けを検討する際は、土地の広さやコスト面にも注意が必要です。本来は部屋をつくることができる空間の床を取り払うことになるので、面積に余裕がないと取り入れるのが難しい場合もあります」
吹抜け構造にすると夏場は暑い日差しが入ったり、冬場は暖かい空気が上に流れて寒いイメージがあるかもしれません。また、空間が広いことから冷暖房効率が下がるのでは?と心配になる人もいるでしょう。しかし、断熱性能や気密性の高い家にすることでそういった問題は解決します。空気を循環させるシーリングを天井に設置するのも効果的です。暑さ・寒さ対策は、建築段階でよく確認しておきましょう。
吹抜けについてもっと詳しく
「吹抜け」のあるこだわりの家づくり【実例付き】
中庭やアウトサイドリビングを設ける
中庭を設けたり、リビングからそのまま屋外に出ることができるアウトサイドリビングも開放感を演出する方法です。
「家の中のいろいろな場所から外の風景が見えるようにすることで開放感を感じることができます。例えば、玄関を開けるとリビングの先にある中庭が目に入ることによって空間を広く感じます」
階段で開放感を演出する
「LDKに階段を設置すると部屋に開放感を演出することができます。階段を設置する場合は最低2畳のスペースが必要となります」
特に視覚的に圧迫感を与えないスケルトンタイプの階段が人気です。
間仕切りを減らす
「間仕切りを減らすと家の中が物理的に広くなります。部屋と部屋の間にある仕切りを少なくすることで大きな空間が生まれ、開放感を得ることができます」
できる限り壁や扉をなくしたい場合でも、設計上減らすことが難しい部分もあります。施工会社に要望を伝え、プロの意見を確認してみましょう。
土間リビングを設ける
近年、リビングに土間を取り入れるデザインも注目されています。屋内と屋外の繋がりを感じることができ、リビングに開放感を取り入れることができます。
開放感を演出するための内装やインテリアのポイント
背の低い家具を置く
背の高い家具を置くと空間の中に圧迫感が生まれ視界を遮る原因にもなります。できるだけ家具は背の低いものを選ぶことで、広々とした開放的な空間になります。
水平のラインを意識する
「家具や照明などで、水平のラインをつくると横の広がりを感じられる空間になります」
横に伸びる一直線のラインを意識して空間づくりをすると、広々とした雰囲気が生まれます。建築段階で決めたほうがよい部分もあるので、施工会社とよく相談しましょう。
シンプルなデザインのインテリアを選ぶ
開放感のある家にするためには、インテリアのデザインも大切です。ごちゃごちゃと雑然とした雰囲気になってしまわないように、できるだけシンプルでスタイリッシュなインテリアを選ぶとよいでしょう。家電の配線なども見えないようにするのがベストです。
フォーカルポイントをつくる
「フォーカルポイントとは、建築の用語で『目を引く点』のことをいいます。どこを見てほしいかを意識して空間づくりをしています。例えば、絵画やシンボルツリー、アクセントクロスなど、その場所でいちばん先に目が行く場所がフォーカルポイントです」
フォーカルポイントがあると、自然と部屋の奥のほうに視線が届きやすくなり、空間の奥行きを感じることができます。
開放感のある家の実例紹介!
ここからは、モレスの家が手掛けた開放感あふれる注文住宅の実例を本体価格とともに紹介します。
※価格は2022年10月時点のものです。外構費や設計費、土地代等は含まれません。
視線の先にテラスがある広々としたLDKの家
家族がくつろいだり、ゆっくりと食事を楽しむLDK。その先にテラスを繋げ、広々とした雰囲気を演出しました。天井には間接照明を一直線に埋め込み、空間の横の広がりを感じられる設計になっています。
本体価格:約2500万円
LDK階段とアウトサイドリビングを設けた開放感のある家
大人の感性を刺激するスタイリッシュなLDK。一角に階段を設けたことで、上階との縦の広がりが生まれました。階段の上の窓から採光を確保できるのもポイントです。ウッドデッキのアウトサイドリビングはいつでも裸足で出ることができるくつろぎのスペース。ベンチやテーブルを置いているので、天気の良い日は外で食事を楽しむこともできます。
本体価格:約2500万円
日光が差し込む明るい吹抜け階段がある家
階段のスペースを吹抜けにしたことで、LDKに開放感が生まれました。LDK部分と吹抜け部分の天井の高さに差を出し、より縦の広がりを感じることができる空間に仕上がっています。また、窓の外には中庭があり、視線の抜けを感じるつくりになっています。
本体価格:約3500万円
大胆な吹抜け構造が魅力のホテルライクな家
1階と2階を大胆に繋げた吹抜け構造のLDKが魅力的な住まい。ダイニング部分の天井を低くしたことによって、より開放感を感じられるつくりになっています。天井が高いリビングには大きな観葉植物を置き、ホテルライクな印象に。家族がのびのびと過ごせる空間です。
本体価格:約4000万円
開放感のある理想の住まいを実現した先輩たちの事例を紹介!
ここからはスーモカウンターを通じて開放感のある家を建てた先輩の実例を紹介します。理想を実現した先輩たちのマイホームを見て、ぜひ家づくりのヒントにしてください。
【case1】吹抜け階段で開放的なリビングに
築60年の妻の実家を離れ、新築の家づくりに踏み切ったOさん夫妻。夏は涼しく冬は暖かい全館空調の家を建て、一年中快適に過ごすことができる理想のマイホームが完成しました。リビングには階段と吹抜けを設け、開放感を演出しています。1階と2階が繋がるオープンな間取りにしたため、猫が自由に行き来でき、家族が自然とリビングに集まりやすくなっているのもポイントです。
この実例をもっと詳しく→
年中どの部屋も快適な全館空調の家でかなえた猫との楽しい暮らし
【case2】三人家族が心地よく暮らせるマイホーム
娘が生まれたことをきっかけに家づくりを始めたという夫妻。静かな住環境を求めてスーモカウンターに土地探しの相談をし、理想の住まいが完成しました。家族がほとんどの時間を過ごすリビングは、開放感のある吹抜け構造に。気密性が高いため、冷暖房は全空間に行き渡ります。家族全員の衣類を収納できるファミリークロークも設け、片付けやすさもポイントです。家の中をいつでもすっきりと片付けておくことができます。
この実例をもっと詳しく→
駅遠ながら住環境を優先。吹抜けのリビングを2歳の娘が干し芋を持って走り回る“圧迫感”がない家
【case3】スケルトン階段を取り入れた18畳以上のリビング
結婚から約1年が経ち、家づくりをスタートさせたというTさん夫妻。二人の理想を詰め込んだ広さ18畳以上のLDKにはリビングインのスケルトン階段を設置。すっきりとストレートな階段にしたいというのもTさんの希望によるものでした。開放感にこだわって設計したリビングは、おしゃれで心地よいお気に入りの空間になりました。
この実例をもっと詳しく→
緑豊かな閑静な住宅街。住み心地の良い大好きな街でマイホームの夢を実現
【case4】勾配天井で開放感を演出した平屋建ての住まい
猫を家族に迎えたことをきっかけに家づくりを決心したKさん。高齢になったときの負担を考え、平屋建ての家を希望しました。平屋であることを活かしてリビングには勾配天井を採用。ハイサイドライトから光が注ぐ、明るく開放感にあふれた空間を実現。Kさんも猫も快適に過ごせる住まいになりました。
この実例をもっと詳しく→
中庭を囲んで一周できる動線が快適な暮らしをかなえた平屋の住まい
【case5】海外リゾートをイメージした開放感のある家
世田谷区の環境が気に入り、土地を購入して家づくりを始めたKさんファミリー。過去に海外で生活していたことから、リゾートホテルのような開放感のある家にしたいと考えていたそうです。そこで、リビングは大胆な吹抜けの構造に。シーリングも設置してリゾートホテルをイメージした特別感のある空間にデザインしました。
この実例をもっと詳しく→
理想の住まいが快適なおうち時間にフィット、家族それぞれが楽しい空間
開放感のある家にするためのポイントは?
最後に、開放感のある家をつくるポイントを古谷さんに聞きました。
「開放感のある家を設計するときに大切なことは、空間のバランスを見ながらどのように開放感を出すかを決めることです。ぜひ、好みのデザインの家を手掛けている会社を探し、理想のイメージを共有してみてください。開放感を演出するにはいろいろな手法があるので、そういったデザインが得意な会社に依頼することもポイントです」
吹抜けや勾配天井、中庭などさまざまな手法で住まいに開放感を演出することができます。どんな家で暮らしたいか、家族の理想を整理して家づくりを始めましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
開放感のある家を建てたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの? という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
取材協力/古谷雄一さん
取材・文/佐藤 愛美(りんかく)