住宅はその構造によって「木造」や「RC造」などがありますが、「軽量鉄骨造」も代表的な構造の一つです。鉄骨を使った構造には、ほかに「重量鉄骨造」というものもありますが、一体どこが違うのでしょうか? 軽量鉄骨造のメリット・デメリットとあわせて、設計工房の一級建築士である久保宗一さんに話を聞きました。
軽量鉄骨とは?
鉄骨造とは、柱や梁などの構造体に鉄骨を使用している建物のことです。
鉄骨造の種類
「鉄骨造には、軽量鉄骨造と重量鉄骨造があり、鉄の厚さが6mm未満のものが軽量鉄骨、6mm以上のものが重量鉄骨です。鉄骨の強度が異なるため、工法も異なります」(久保さん、以下同)
また、鉄骨造の法定耐用年数は、厚さによって異なります。国税庁が出している法定耐用年数によると、以下のとおりです。
● 厚み3mm以下:19年
● 厚み3mm~4mm:27年
● 厚み4mm以上:34年
木造との比較
木造には、大きく分けて木造軸組工法によるものと、2×4工法によるものがあります。
それでは、鉄骨造と木造を比較した場合、鉄骨造にはどのような特徴があるのでしょうか?
木造と比較した鉄骨造のメリット
「鉄骨造は、木造に比べて耐震性が高いのが特徴です。また、素材自体の強度が高いので、プランニングの際に柱や耐力壁の制約を受けにくく、自由度の高い設計が可能です。構造材が鉄なので、シロアリの被害がない点もメリットと言えます」
防音性は外壁材と断熱材によりますが、外壁にALCを使用する場合は、必然的に木造よりは防音効果が見込めると、久保さんは言います。
また、部材を工場で生産してから現場で組み立てるため、工期が短いというのも特徴の一つです。
「ただし、最近では木造でも同様の方式で建てることが多いため、工期の短さは木造と比較してメリットとまではいえません」
木造と比較した鉄骨造のデメリット
「鉄は木よりも熱を伝えやすいので、素材自体が断熱性の高いALCの外壁と、その内側に更に断熱材を施工するなど、断熱性を高める工夫をする必要性があります。また、建築コストは木造よりも高くなる傾向にあります」
そのほかにも、結露が起きやすいというデメリットがあります。木造と比較した場合、湿度の調整が難しく、建物内に結露が発生する可能性があります。ただ、調湿性が高い建材を使っている場合は、結露をある程度防げることもあります。
また、木造に比べると鉄骨造は熱伝導率が高いため、夏は暑くなり、冬は寒くなります。一年中冷暖房器具を使用すると電気代もかかることから、断熱性・遮熱性を高めることが大切です。
RC造との比較
RC造(鉄筋コンクリート造)には、ラーメン構造のものと、壁式構造のものがあります。住宅に多いのは、壁で建物の重さを支える壁式構造です。
それでは、鉄骨造とRC造を比較した場合、鉄骨造にはどのような特徴があるのでしょうか?
RC造と比較した鉄骨造のメリット
「鉄骨造は、RC造に比べて工期が短く、建築コストを抑えられるのがメリットです。軽量鉄骨造なら、建物が軽いので地盤改良も不要なことが多く、そういった面でもコストを抑えられます」
RC造と比較した鉄骨造のデメリット
「耐火性や耐震性、防音性はRC造より劣りますが、それほどデメリットではありません」
軽量鉄骨造のメリット
冒頭で説明したとおり、軽量鉄骨の鉄の厚さは重量鉄骨よりも薄いという特徴があります。
「つまり、軽量鉄骨造は、重量鉄骨造に比べて柱が細くなります。そのため、鉄骨の柱と梁に加えて、木造軸組工法の筋交いにあたるブレースという部材を柱と柱の間、および水平方向にも入れて、構造を補強します」
また、軽量鉄骨造は以下のメリットがあります。
● 規格部品が多く品質が安定し、納期も比較的早い
● 木造に比べて耐震性が高い
● 部材が軽いため人力で搬入でき、狭小地でも建てられる
規格部品が多く品質が安定し、納期も比較的早い
軽量鉄骨造は、規格部品が多いことが特徴です。その部品を現場で組み立てるため、職人の腕前に左右されることなく、安定した建築ができます。また、木造やRC造に比べると、納期が早いこともメリットの一つです。
木造に比べて耐震性が高い
鉄骨造は木造に比べると、耐震性が高いという点もメリットです。軽量鉄骨は、木材よりも頑丈であり、倒壊するリスクの低さが評価されつつあります。
しかし、ツーバイフォータイプの住宅など、木造でも耐震性が強いものもあります。
そのため、木造でも素材によっては鉄骨造と同等の耐震性をもつ工法も出てきています。
部材が軽いため人力で搬入でき、狭小地でも建てられる
「軽量鉄骨造は、部材が軽いため人力で搬入でき、狭小地でも建てられるのがメリットです。建物の重量も軽く、木造とほとんど変わらないため、基礎工事も簡易的なもので済みます。そのため、重量鉄骨造に比べて建築コストを抑えることができます」
軽量鉄骨造のデメリット
プランの成約がある
軽量鉄骨は、間取りの自由度が低い点がデメリットの一つです。軽量鉄骨造では、家の強度を保つために、薄い鋼材を壁や柱に設置して施行します。
特に3階建ての場合は、1階の耐力壁の量を増やさなければならないため、プランに制約が出ます。
大空間の空間はつくれない
上記の通り、構造上の強度から、重量鉄骨造ほどの大空間はできません。広い空間を作りたい場合は他の工法も視野に入れて検討しましょう。
リフォームの際に制限がかかることがある
仮にリフォームやリノベーションをしようと思ったときに、部屋の間取りを変更したくても、構造上取り除けない柱や壁がある場合も多いです。
重量鉄骨造に比べると自由度は低いですが、設計の時点で将来の家族構成なども考え、間取りを設計することで、解消できる点でもあります。
軽量鉄骨造住宅の実例を紹介!
ここでは、実際に設計工房が手掛けた軽量鉄骨造住宅を実例として紹介します。
【実例1】外に閉じ、中は開放的な鉄骨らしさあふれる住宅
「敷地面積60坪、建物の中心には中庭があり、プライバシーを確保しながら採光と通風を確保。2層分の吹抜けをもつリビングはとても明るく開放的です。鉄骨好きの施主の方がこだわって建てた鉄骨住宅です」
【実例2】7.4坪の狭小地に建つ3階建て軽量鉄骨住宅
「敷地面積7.4坪、都心に建つ3階建ての狭小住宅です。小さいながらも1階にはビルトインガレージがあります」
【実例3】クリーム色の外壁が特徴的な軽量鉄骨3階建て
「敷地面積11坪、3階建ての狭小住宅です」
軽量鉄骨造で理想の住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、軽量鉄骨造の住まいを建てた先輩の事例を紹介します。先輩が、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
耐震性にこだわり鉄骨造を選んだシンプルな真四角の家
実家を建て替えて二世帯住宅にすることにしたSさん夫妻。いろいろ見て調べるうちに、耐震性の面で、資材の強度がわかりやすく、構造計算式が明確な、鉄骨造の家を建てたいと思うようになりました。
一度業界に詳しい第三者の意見も聞いてみようとスーモカウンターを訪問。希望を伝えて鉄骨造に強い3社を紹介されました。その中から、最終的に1社に建築を依頼。完成したのは、シンプルな真四角の家。玄関は2つあり、内階段になった上下分離型の二世帯住宅です。
この実例をもっと詳しく→
夫妻の世界観が詰まった、オフィス兼二世帯住宅
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「軽量鉄骨の住宅が得意な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
イラスト/村林タカノブ
監修/SUUMO編集部(規格部品が多く品質が安定し、納期も比較的早い、木造に比べて耐震性が高い、プランの成約がある、リフォームの際に制限がかかることがある)