住宅はその構造によって「木造」や「RC造」などがありますが、「軽量鉄骨造」も代表的な構造の一つです。鉄骨を使った構造には、ほかに「重量鉄骨造」というものもありますが、一体どこが違うのでしょうか? 軽量鉄骨造のメリット・デメリットとあわせて、設計工房の一級建築士である久保宗一さんに話を聞きました。
鉄骨造とは?
鉄骨造の種類
鉄骨造とは、柱や梁などの構造体に鉄骨を使用している建物のことです。
「鉄骨造には、軽量鉄骨造と重量鉄骨造があり、鉄の厚さが6mm未満のものが軽量鉄骨、6mm以上のものが重量鉄骨です。鉄骨の強度が異なるため、工法も異なります」(久保さん、以下同)


木造との比較
木造には、大きく分けて木造軸組工法によるものと、2×4工法によるものがあります。


それでは、鉄骨造と木造を比較した場合、鉄骨造にはどのような特徴があるのでしょうか?
●木造と比較した鉄骨造のメリット
「鉄骨造は、木造に比べて耐震性が高いのが特徴です。また、素材自体の強度が高いので、プランニングの際に柱や耐力壁の制約を受けにくく、自由度の高い設計が可能です。構造材が鉄なので、シロアリの被害がない点もメリットと言えます」
防音性は外壁材と断熱材によりますが、外壁にALCを使用する場合は、必然的に木造よりは防音効果が見込めると、久保さんは言います。
また、部材を工場で生産してから現場で組み立てるため、工期が短いというのも特徴の一つです。
「ただし、最近では木造でも同様の方式で建てることが多いため、工期の短さは木造と比較してメリットとまでは言えません」
●木造と比較した鉄骨造のデメリット
「鉄は木よりも熱を伝えやすいので、素材自体が断熱性の高いALCの外壁と、その内側に更に断熱材を施工するなど、断熱性を高める工夫をする必要性があります。また、建築コストは木造よりも高くなる傾向にあります」
RC造との比較
RC造(鉄筋コンクリート造)には、ラーメン構造のものと、壁式構造のものがあります。住宅に多いのは、壁で建物の重さを支える壁式構造です。
それでは、鉄骨造とRC造を比較した場合、鉄骨造にはどのような特徴があるのでしょうか?
●RC造と比較した鉄骨造のメリット
「鉄骨造は、RC造に比べて工期が短く、建築コストを抑えられるのがメリットです。軽量鉄骨造なら、建物が軽いので地盤改良も不要なことが多く、そういった面でもコストを抑えられます」
●RC造と比較した鉄骨造のデメリット
「耐火性や耐震性、防音性はRC造より劣りますが、それほどデメリットではありません」
軽量鉄骨造の特徴、メリット・デメリットは?
特徴
冒頭で説明した通り、軽量鉄骨の鉄の厚さは重量鉄骨よりも薄いという特徴があります。
「つまり、軽量鉄骨造は、重量鉄骨造に比べて柱が細くなります。そのため、鉄骨の柱と梁に加えて、木造軸組工法の筋交いにあたるブレースという部材を柱と柱の間、および水平方向にも入れて、構造を補強します」
メリット
「軽量鉄骨造は、部材が軽いため人力で搬入でき、狭小地でも建てられるのがメリットです。建物の重量も軽く、木造とほとんど変わらないため、基礎工事も簡易的なもので済みます。そのため、重量鉄骨造に比べて建築コストを抑えることができます」
デメリット
「構造上の強度から重量鉄骨造ほどの大空間はできません。特に3階建ての場合は、1階の耐力壁の量を増やさなければならないので、プランに制約が出ます。また、リフォームの自由度という面でも重量鉄骨造には劣ります」
重量鉄骨造の特徴、メリット・デメリットは?
特徴
見てきた通り、重量鉄骨造には厚さ6mm以上の鉄が使われます。そのため強度に優れている反面、重いなどの特徴があります。
「重量鉄骨造は太い鉄骨の柱と梁で構成されます。軽量鉄骨のようなブレースは不要です」
メリット
「軽量鉄骨造に比べて柱の本数が少なく済み、広い空間が可能なので高層階の対応もできます。耐力壁が不要なため、間取り変更を伴うリフォームがしやすい点もメリットです」
デメリット
「軽量鉄骨造に比べてコストは高くなります。また、重機対応が必要なので、重機が入れないような狭小地だと建てられません。杭工事が必要となるケースも多く、そのための費用も必要ですし、しっかりとした基礎が必要です」
室内は、柱が太いので室内に出っ張り、その分デッドスペースが生まれてしまいます。そこをうまく利用したプランニングの工夫が欠かせません。
軽量鉄骨造住宅の実例を紹介!
ここでは、実際に設計工房が手掛けた軽量鉄骨造住宅を実例として紹介します。
【実例1】外に閉じ、中は開放的な鉄骨らしさあふれる住宅
「敷地面積60坪、建物の中心には中庭があり、プライバシーを確保しながら採光と通風を確保。2層分の吹抜けをもつリビングはとても明るく開放的です。鉄骨好きの施主の方がこだわって建てた鉄骨住宅です」
【実例2】7.4坪の狭小地に建つ3階建て軽量鉄骨住宅
「敷地面積7.4坪、都心に建つ3階建ての狭小住宅です。小さいながらも1階にはビルトインガレージがあります」
【実例3】クリーム色の外壁が特徴的な軽量鉄骨3階建て
「敷地面積11坪、3階建ての狭小住宅です」
軽量鉄骨造で理想の住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、軽量鉄骨造の住まいを建てた先輩の事例を紹介します。先輩が、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
耐震性にこだわり鉄骨造を選んだシンプルな真四角の家
実家を建て替えて二世帯住宅にすることにしたSさん夫妻。いろいろ見て調べるうちに、耐震性の面で、資材の強度がわかりやすく、構造計算式が明確な、鉄骨造の家を建てたいと思うようになりました。
一度業界に詳しい第三者の意見も聞いてみようとスーモカウンターを訪問。希望を伝えて鉄骨造に強い3社を紹介されました。その中から、最終的に1社に建築を依頼。完成したのは、シンプルな真四角の家。玄関は2つあり、内階段になった上下分離型の二世帯住宅です。
この実例をもっと詳しく→
夫妻の世界観が詰まった、オフィス兼二世帯住宅
軽量鉄骨造の住まいを建てるときのポイントは?
最後にあらためて久保さんに、軽量鉄骨造の住まいを建てるときのポイントを聞きました。
「鉄骨の大きなメリットは耐震性と大空間を確保できることです。それらを求める方は、鉄骨を選ぶといいでしょう。軽量鉄骨造でも木造よりは広い空間を得ることが可能です。
また、軽量鉄骨と言うとハウスメーカーで建てるイメージが強いようですが、ハウスメーカー以外でも軽量鉄骨を扱っている設計事務所や建築会社はあるので、探してみてはいかがでしょうか」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「軽量鉄骨の住宅が得意な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
取材協力/設計工房/Arch-Planning Atelier
取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/村林タカノブ