住まいの収納を考えるとき、検討したいのがウォークインクローゼット。洋服だけではなく、カバンや小物なども収納できると人気のウォークインクローゼットですが、計画するときはどのような点に注意すればいいのでしょうか。One’s Lifeホームの仲田さんに伺ったお話を間取り実例とともに紹介します。
ウォークインクローゼットとは|表記は「WIC」や「WCL」
ウォークインクローゼット(Walk-in Closet)は、間取り図などでは「WIC」と表示される大きめの収納のことです。「WCL」と表示されることもあります。
「具体的には、人が歩くことができる収納スペースのことを指します」(仲田さん、以下同)
ウォークインクローゼットと他のクローゼットの違い
ウォークインクローゼットは、コの字型やL字型など、形状が豊富にあることも特徴です。最低でも1.5畳から2畳の広さは必要とされており、2畳から4畳の広さが一般的です。
一方、クローゼットとは、人が入ったり通り抜けたりするスペースは基本的になく、効率的な衣類の収納を目的としたものです。奥行きは、約50〜60cmが標準です。間取り図では「CL」と表記します。
最後に、ウォークスルークローゼットとは、出入口が2カ所以上設けられ、通り抜け可能な収納を指します。構造上、最低でも2畳から3畳が必要とされており、前述した2種類のクローゼットよりも大きく作られることが一般的です。間取り図では「WTC」と表記します。
ウォークインクローゼットのメリット
仲田さんによると、ウォークインクローゼットのメリットとして、主に次の3つがあると言います。
「一つ目は、クローゼット内で着替えができコーディネートも完成できること、二つ目はスーツケースなど大きいものが置けること、そして三つ目として、季節ごとの衣替えが不要であることが挙げられます」
どれも、一般的な壁付けのクローゼットに比べて広いこと、人が中に入れることが、メリットにつながっています。
ウォークインクローゼットのデメリット
ウォークインクローゼットには、メリットがある一方で、デメリットもあります。
「まず、壁付けのクローゼットに比べて広いスペースが必要です。一方で、衣類が少ない人にとっては、せっかくの広いスペースが無駄に感じるかも知れません。また、人が歩くスペースに荷物が置けない点もデメリットと言えます」
ウォークインクローゼットはいらないって本当?
ウォークインクローゼットは、人が歩くスペースに物が置けなかったり、多くの場合自然光が入らなかったりすることから「ウォークインクローゼットはいらない」という声もしばしば耳にします。
果たして本当にそうでしょうか。ウォークインクローゼットは、人や場所を選ぶ代わりに、適した環境に設置するととても便利な収納スペースです。
以下に、ウォークインクローゼット設置がおすすめな人の特徴をご紹介します。
ウォークインクローゼットをおすすめしたい人
ウォークインクローゼットは「2人以上で住んでいて、荷物や衣類が多いけれど収納スペースはなるべくまとめたい」という人に最適です。
2人以上で住んでいる場合、標準的な間取りではクローゼットも2カ所以上に分散することがよくあります。収納スペースが数カ所に分散していると、どこに何を置いたか忘れてしまうことも珍しくありません。
一方で、ウォークインクローゼットを設置していれば広いスペースが確保されるため、1カ所により多くの荷物や衣類を収納できます。
以上のように「複数人で住んでいるが、荷物はなるべくまとめることで、見つけやすくした」という人などには、おすすめな収納です。
ウォークインクローゼット計画のポイントは?
住まいづくりを進めるにあたって、ウォークインクローゼットはどのように計画すればいいのでしょうか。主なポイントについて紹介します。
設置場所
仲田さんによると、主な設置場所として次の3つがあると言います。
1. 主寝室に直結する場所
2. 洗面室に直結する場所
3. 主寝室・洋室と同じフロア
「主寝室に直結する場所にウォークインクローゼットを設けると、朝起きてすぐに着替えられて便利です。また、洗面室に直結する場所に設けた場合も、帰宅後、洗面室に入ってすぐに着替えられるというメリットがあります。
最近では、主寝室・洋室と同じフロアの廊下からアクセスできる場所にウォークインクローゼットを設けて、家族で使うという利用方法も増えています」
レイアウト
レイアウトは、基本の形として次の4つがあります。
1. Ⅰ型
ハンガーパイプや棚が1列にまとまったタイプです。
2. Ⅱ型
収納スペースが、通路を挟んで向かい合う2列あるタイプです。単純に収納力はⅠ型の2倍になります。
3. コの字型
出入口以外の3壁面にコの字型に収納スペースを配置したタイプです。広いスペースが必要ですが、収納力が高いのが特徴です。
4. L型
Ⅰ型の奥の壁面にもハンガーパイプや棚を設けてL字型にしたタイプです。限られたスペースでも効率的に収納することができます。
「スペースに余裕がある場合はコの字型、限られたスペースの場合はL型と、スペースによって選択できるタイプが変わってきます。ほとんどの方は居室を広く取りたいため、居室を優先して配置した結果、WICのスペースが決まり、レイアウトも決まるケースが多いですね」
広さ・大きさ・幅
「広さとしては、人数=畳数(4人家族の場合は、4畳)が目安になります。最低でも収納の奥行+人が歩くスペースが必要になりますが、服だけをかける場合は奥行650mm以上、布団を置く棚(中段)を設ける場合は奥行750mm以上ほしいですね。なお、人が歩く幅は、650mm以上で考えるといいでしょう」
パイプや棚の配置
パイプや棚の配置は、置く物によってさまざまなバリエーションが考えられます。
1. 枕棚+ハンガーパイプのみ設置
「枕棚というのは、収納内の上部に設けた棚のことです。
この枕棚とハンガーパイプの組み合わせが最も一般的でしょう。上着も、丈の長いコートやパンツも収納しやすい配置です」
2. ハンガーパイプを2段設置
「枕棚を設けず、ハンガーパイプを上下2段設ける配置もあります。その場合は、丈の長い衣類はかけられないので上着専用になりますが、ハンガーパイプ1段のときの2倍の収納力が得られます」
3. 棚を設置
「壁全面に棚を設置するというプランもあります。バッグや帽子などの小物や、畳んだ衣類の収納に便利です」
4. 棚やハンガーパイプなどを設けないシンプルなプラン
「あえて棚やハンガーパイプを設けないケースもあります。その場合、衣類や小物などは、市販のハンガーラックや収納ボックスなどを使って整理します。将来的に使い方が変わる場合などに対応しやすいプランです」
5. 布団を収納する中段の設置
「布団置き場になる大き目の棚のことを『中段(ちゅうだん)』と呼びます。ウォークインクローゼット内に布団も収納したい場合は、この『中段』を設置するといいでしょう」
扉のタイプ
ウォークインクローゼットの計画にあたっては、扉のタイプも重要になります。仲田さんによると、扉のタイプには主に以下の4つがあり、それぞれメリットとデメリットがあると言います。
1. 片開きドア
「片開きドアは、WIC内のスペースを壁から壁まで有効に使えるというメリットがあります。一方、WICに隣接する部屋のドアの可動範囲にベッドや物が置けないというデメリットがあります」
2. 引き戸
「引き戸は、WICに隣接する部屋のスペースに影響を与えないので、ベッドなどの配置がしやすいというメリットがあります。一方、戸の引き込みスペースが必要で、WIC内に引き込む場合は壁面にハンガーパイプを設置できないなど、制約が出る点がデメリットです」
3. 折れ戸
「折れ戸は扉の開閉時に室内側のベッドや机などの家具に当たりづらいというメリットがあります。一方で、折戸を開けたときの出入口の幅が、片開きドアや引き戸より狭くなってしまうため、通りづらいというデメリットがあります」
4. 扉を設けない
「WICに扉を設けないケースもあります。この場合、換気がしやすく湿気が溜まりにくいのがメリットです。一方、隣接する部屋の冷暖房効率が悪くなるというデメリットがあります。また、見せる収納になるため、片付けが苦手な人にはおすすめしません。私のおすすめは、扉付きのウォークインクローゼットです」
換気の方法
カビの発生を防ぐため、換気の方法も重要なポイントです。仲田さんによると、換気の方法には、主に以下の3つがあると言います。
1. 開閉できる小窓を設置
「一つ目は換気を目的とした小窓を設置する方法です。衣服の色焼けを防ぐため、大きな窓は避けた方がいいでしょう」
2. 換気扇の設置
「衣服の色焼けが気になる、または間取りの関係で窓が設置できない場合でも、換気扇を設置して換気することができます。湿度センサー付きの換気扇を選べば湿度コントロールもしやすくて便利です」
3. WICのドアをガラリ(換気口)付きのものにする
あると便利な付帯設備
収納に便利な設備はもちろん、身支度や家事の視点からWICにあると便利な付帯設備について紹介します。
1. 可動棚
「WIC内に設ける棚は、固定式のものではなく可動棚にすると、衣類や荷物に応じて高さを変えられて便利です」
2. 鏡
「特に、全身を映せる姿見だと、WIC内で身支度を整えるのに便利です」
3. コンセント
「WIC内にコンセントを設けておけば、電動自転車のバッテリーの充電など、何かと重宝します」
4. 作業台
「WIC内に作業台を設ければ、アイロン掛けや洗濯物たたみなど、家事室のような使い方もできます」
5. 珪藻土
「WIC内の壁や天井に珪藻土を塗れば、調湿・消臭効果が期待できます」
ウォークインクローゼットをより使いやすくするための収納ノウハウ
ウォークインクローゼットをより使いやすくするためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
● 種類や特徴別に定位置を決める
● 手前には使用頻度の高い物を置く
● 詰め込みすぎず余裕を持たせる
● 動線を意識してスペースを確保する
ウォークインクローゼットの構造上、上中下、いずれの部分にも収納可能です。自身の生活スタイルに合わせて、使用頻度の高い物・低い物の定位置を決めることをおすすめします。特に、手前側には使用頻度の高い物を置くようにしましょう。
また、ウォークインクローゼットは多くの物を収納できる分、詰め込みすぎには注意が必要です。風通しをよくして、カビやノミ・ダニなど害虫の発生を防ぎましょう。
タンスや収納ボックスなどを置く場合は、取り出した物を一時的置けるスペースや、人が動けるようなスペースを確保するようにしましょう。動線を意識すると、物や衣類の取り出しが簡単です。
ウォークインクローゼットの実例紹介!
ここでは、実際にOne’s Lifeホームが手掛けたウォークインクローゼットを実例として紹介します。
【実例1】生活動線にもこだわった主寝室とつながる鏡付きのWIC
主寝室と直結したウォークインクローゼットです。1階フロアは、生活感の出やすい水まわりや、夫婦のプライベート空間を集約した間取りになっており、洗濯・収納・着替えなどの生活動線がスムーズに行えます。
【実例2】書斎と廊下の双方からアクセスできる独立型のWIC
2階フロアの廊下からダイレクトにアクセスできる独立したウォークインクローゼットです。パイプの位置や高さなど、徹底的に持ち物を分析して配置を設計しました。
隣接するオープンな書斎からもアクセスできる2WAY動線です。
【実例3】壁紙にもこだわり、スッキリ感を演出したL型のWIC
1階の主寝室に直結するウォークインクローゼットです。洋服や持ち物、小物などを細かく検討し、棚の高さを調節することで過不足なく収納できるようにしています。壁紙に縦のストライプ柄を選択し、見た目にもスッキリ感を演出しています。
【実例4】キッチン、パントリーと続く家事ラクなWIC
パントリー兼家事室の奥に配置したWICです。キッチンの横にあるパントリーには、棚と机をオリジナルで設けており、アイロンをかけたり、子どもが勉強したりと多目的に使えます。その奥には家族の物を収納するウォークインクローゼット(ファミリークローゼット)があり、洗濯物をまとめてしまえます。
帰ってきて荷物をパントリーにおいて、コートをクローゼットに掛けるというように、家事動線にも配慮されています。
【実例5】デッドスペースにも棚を設け、収納効率を高めたWIC
主寝室に直結するWICに可動棚と2段のハンガーパイプ、奥に造り付けの棚を設置しました。その上に換気用の窓も設置。デッドスペースになりがちなⅡ型WICの奥に低めの棚を配置して、バッグや帽子などの小物を置けるようにしています。
【実例6】広く使いやすいコの字型のWIC
主寝室に直結しているコの字型のWICです。一般的な枕棚+ハンガーパイプの組み合わせと、正面に可動棚を配置してバッグなどが置けるようになっています。なお、換気は換気扇を使用しています。
【実例7】天井高を活かしたロフト型のWIC
ちょっと遊び心のあるロフト型のWICです。勾配天井など、天井高がある場合は、このように少し変わったレイアウトも可能になります。
WICを上手く取り入れた住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターを利用して、WICを上手く取り入れた素敵な住まいを建てた先輩たちの事例を紹介します。どんな点にこだわり、どんな住まいづくりを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】1階と2階のどちらにも大容量のWICを配置
候補を3社紹介してもらい、その内の1社と契約しました。
間取りを考えるうえで重要なポイントとなったのが、生活動線。1階と2階、どちらにも大容量のウォークインクローゼットを設けている点もR邸の特徴です。1階のWICには日常使いする生活用品類を収め、2階のWICには家族全員の衣類を収納。2階の各部屋には収納を設けずに済むので、空間が広々と使えます。
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【case2】持ち物を把握した上でWICの広さを具体的に要望
広々した注文住宅を建てることにしたSさん。スーモカウンターを訪れ、自分たちの理想や要望を全て伝え、4社の建築会社を紹介してもらいました。面談を経て、最終的に自由設計に対応している1社に依頼することに。
自分たちの持ち物を事前に把握していたので、ウォークインクローゼットは3畳以上欲しいというように、明確に要望を伝えたそうです。片付けを意識した収納を設けたことで、スッキリした状態をキープできるようになりました。
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【case3】WICやパントリーで収納を充実させ、生活感のない暮らしが実現
1LDKのアパートで暮らしていたOさん夫妻は、部屋が手狭なことや、収納の少なさを不満に思い、「自分たちの好みに合うような、シンプルモダンの家をつくりたい」と考えるようになりました。そこで、スーモカウンターを訪れ、紹介してもらった建築会社の1社と契約。
完成した新居は、パントリーやウォークインクローゼットなど、収納を充実させ、生活感のないシンプルな住まいになりました。
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【case4】家族分の洋服を収納する3畳のWIC
家族がのびのびと笑って過ごせるような家にしたいと家づくりをスタートさせたSさん。将来のことも見据えてフラットな間取りの平屋プランを希望しました。スーモカウンターでは要望や予算に合った住宅メーカーを6社リストアップし、その中から3社と面談。最終的にプラン面と予算面で柔軟性のある会社に依頼することに。
主寝室から直結するウォークインクローゼットの広さは3畳。ここに家族全員の洋服を収納しています。
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【case5】出勤前の身支度を整える夫専用のWIC
親世帯と共に住んでいた平屋を、二世帯住宅へ建て替えたいとスーモカウンターを訪れたSさん夫妻。家事動線やデザイン面についても配慮してほしいとアドバイザーに伝えると、自然素材の扱いが得意な6社を紹介されました。
夫は、出勤準備用のウォークインクローゼットが欲しいと希望。最終的に1社に絞り込んで、完成した新居には希望通り1階に夫専用のコンパクトなウォークインクローゼットが配置されました。出勤前の身支度はここで済ませ、すぐに出かけることができます。
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【case6】1階の自宅サロンに設置した2畳分のWIC
贈与税の非課税枠改正を鑑み、2021年度のうちに建築会社と契約したいとスーモカウンターを訪れたHさん夫妻。看護師である妻は、働きながらリンパドレナージュの資格を取得し、新居の一角を使ってサロンを開業したいと考えていました。それらの要望を伝えると、土地探しも手伝ってくれる大手の建築会社4社が紹介されました。最終的にスピーディに土地を探してくれた建築会社と契約。
1階には希望していたサロン開業に必要な機能を揃え、2階にはLDKを、3階は主に寝室となる理想の3階建てができました。
1階の施術ルームには、2畳分のウォークインクローゼットを設置し、エステで使用するタオルやアロマオイルなどの用具収納もできます。
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ウォークインクローゼットで失敗しないポイントは?
最後にあらためて仲田さんに、ウォークインクローゼットで失敗しないポイントを聞きました。
「まず重要なのは、日常的に使いやすい事です。家事動線・生活動線を確認して、使いやすい配置を考えましょう。洗濯物をどこに干すかによっても、適した設置場所が変わります。バルコニーに干す場合はバルコニーの近く、洗面室で室内干しがメインの場合は洗面室に直結する配置をおすすめします。
あらかじめ収納したい物を想定しておくことも重要。下着・衣類・布団・大きい荷物・バッグ・小物類など、収納するものでスペースや形が決まります。また、どの部屋につなげるか、家族で使うのか夫婦で使うのかといった視点も重要です」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「収納のプランニングが上手な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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イラスト/村林タカノブ 監修/SUUMO編集部(いらないって本当?、収納ノウハウ)