音楽やマンガなど、圧倒的な熱量を注ぐ「好きなもの」をおもちの方に、こだわりの住まいをご紹介いただく本企画「趣味と家」。第12回目は夫婦ともに筋トレが趣味で、トレーニングルームのある家を建てたManaさんに寄稿いただきました。
動線の工夫や天井・床の補強等により、賃貸時代はかなわなかった「最高のホームジム」を手に入れたManaさん。加えてペットたちが快適に暮らせる空間も意識したことで、大切な家族が幸せに過ごせる“宝箱”のような家になったそうです。
こんにちは。Webデザイナーとしてサイト制作を行うかたわら、制作に関する技術書を執筆しているManaです。「Webクリエイターボックス」というブログも運営していたりします。
自分のブログでは専門的なことばかりで、プライベートなことはあまり書かないのですが、今回は2019年末に広島の郊外に建てた自慢の家を紹介させてください!
私と夫、犬のめそめそとソフス、猫のきなこが平和に暮らすわが家。「移動が面倒くさい」という理由から、寝室のみ屋根裏部屋のように2階に配した以外はすべて1階にある、平屋風の一戸建てにしました。
間取りは庭付きの3LDKで、LDK・寝室・書斎(私の仕事部屋)・WICが三つ、そして自慢の「トレーニングルーム」があります。
【目次】
- 賃貸では満足なホームジムが手に入らない&ペットのために「注文住宅」を選択
- “継続”のため、リビングの横にトレーニングルームを配置
- ペットが快適に暮らせる空間を目指して
- 個室のワークスペースで集中力UP
- 空間の「余裕」が新たな趣味のきっかけに
- 「好き」と「使いやすさ」を両立できた、宝箱のような家
賃貸では満足なホームジムが手に入らない&ペットのために「注文住宅」を選択
私たち夫婦の共通の趣味は「筋トレ」です。
元々住んでいた賃貸も3LDKと広かったため1部屋をトレーニングルームにし、いつでも気が向いたときに筋トレができる環境にしていました。
それはそれで満足していた一方で、普段くつろいでいるリビングルームとは少し離れた場所にあったため次第に利用回数が減っていき……。
また、賃貸では重い器具を置くことも難しく、思い切りトレーニングができるところに引越せないか考えていました。
設置できる器具は限られていました
さらに元々飼っていた猫のきなこに加え、新たに中型犬のめそめそがJOIN。めそめそのために大きな庭が欲しい! すぐに筋トレできるようにリビングのそばに広いトレーニングルームが欲しい! と、「新しい家」について本格的に考え始めるようになりました。
最初は賃貸でも探してみましたが、そんな条件を満たす物件は皆無。そもそも中型犬OKの物件すら見当たりません。だったら思い切って自分たちの理想の家を一からつくってみようと、注文住宅を選択しました。
人生で20回以上引越しをしてきた私ですが、一戸建てを建てるのはもちろん初めて。
まずは住宅展示場を巡り、さまざまな建築会社で話を聞きました。「どんな間取りがいいか」「何部屋いるか」と聞くところが多い中、一社だけ「家族みんなの趣味は何か」「家でどう過ごしたいか」と尋ねる会社が。
ひたすら夢いっぱいに語る私たちの理想像を一つひとつくみ取って、こちらの希望以上のものを提案してくださる担当者さんに出会い、こちらの建築会社さんにお願いすることとなりました。
“継続”のため、リビングの横にトレーニングルームを配置
それでは早速、どんなトレーニングルームに仕上がったのか見ていきましょう!
場所は希望通りリビングルームの真横。写真右奥はキッチンなので、水分補給もしやすいです。
そしてLDKの空間とはガラス張りのドアで仕切っているため、リビングからトレーニングルームが見えるようになっています。
家に遊びに来た人はリビングから見える謎の空間に興味をもち、みんな何かしら筋トレをして帰っていきます。「一度入ると筋繊維が破壊される家」として語り継がれることでしょう。
とにかくリビング並みの広さが欲しかったので、18畳をトレーニングルームに費やしています。
部屋の形が正方形だと器具が配置しづらく、またデッドスペースも生まれやすいという担当者さんの提案により、長方形に。床は重量のある器具を置いても耐えられるようしっかり補強してもらいました。
トレーニングルームで最初に目につくのはサンドバッグ(1万2000円)でしょう。夫が元々ボクシングをしていたため、彼の中で絶対に欲しいアイテムの一つでした。
このサンドバッグ、重さが約45kgあるので賃貸では絶対に導入できません。注文住宅でも通常の柱につり下げると負荷がかかり過ぎるため、この部分には木の梁に鉄を組み合わせて強度を高めた「テクノビーム」という部材を採用しました。
強固で安定性が高く、重いサンドバッグが揺れてもびくともしません。
ちなみにサンドバッグはなるべく揺らさないように打ち込むのがポイント。腕力で押し付けるのではなく、当たる瞬間にすばやく引きます。こうすることでスピードのある「キレ」のあるパンチが繰り出せます!
部屋の奥にあるのはパワーラック(約5万円)。これがあれば、自宅でもジムのようにベンチプレスやバーベルを使った筋トレができます。
日によってベンチプレスで胸筋を、ヒップスラストで大臀筋(だいでんきん)を追い込みます。セーフティーバーがついているので、追い込みをかけまくって力尽きたときでも安心。また上部にあるバーにぶら下がって懸垂もできます。
パワーラックのサイドにバーをつければ、ディップスもできます。
バーをつかんで体を浮かせ、肘を曲げて上体を上下させるトレーニングで、腕や肩まわりなど、上半身のうち大きい筋肉を一度に動かせてオススメ!上半身は懸垂とディップスをやっておけばだいたいなんとかなります。
ベンチはリクライニング可能で、付属の部品をつければ他の部位もトレーニングできます。
例えば、このようにウェイトをつけるとレッグエクステンションやレッグカールができます。下半身のトレーニングといえばスクワットが王道ですが、足の筋肉に集中したいときはこれらのトレーニングもオススメ。
わが家にあるプレートは2.5〜20kg(全部で約4万円)。自宅トレーニングでは十分な重さがそろっています。
以前はそこら中に散乱していたプレートですが、プレートラック(約8000円)を導入してスッキリまとまりました。写真の部分だけで100kg超えです。
私は水泳も趣味なので、陸トレ用としてチューブをつるして利用。前傾姿勢でのストローク動作で、腕が強化できます。結び目を背にすれば背筋、足につければ太ももなどの自重トレーニングも可能です。
スピンバイク(3万9800円)を導入したことで、ウエートトレーニングだけではなく有酸素運動もできるようになりました。普段、有酸素運動では主に水泳をしているのですが、コロナ禍でプールが休館したときに大活躍してくれましたよ。
ただ、スピンバイクをひたすらこぐだけだと飽きてしまったので、スタンディングデスク(約7000円)と組み合わせてお仕事をしながらでも運動ができる画期的な装置を発明。
ゴリゴリとプログラミングをするときはどちらも中途半端になってしまうので、主に情報収集や調査のときに利用しています。
ほかのことに集中しているとふとした瞬間に足が滑ってしまうので、ビンディングペダルに交換しました。ビンディングシューズにクリートをつけて足をペダルに固定させれば、足を意識せず延々とこぎ続けられます。
トレーニングルームの入口付近は、あえて器具などを置かずフリーエリアに。ダンベルや短めのバーベルを使ったり、自重トレーニングをするときに最適な空間です。
入口から見て左側の壁には、大きな鏡(約3万5000円)を取り付けているので、フォーム確認も可能。
割れないようフィルム製の鏡にしたところ、このやんちゃ坊主(ソフス)にやられました……。
また、このフリーエリアはリビングのテレビが見られる位置にあるので、YouTubeで筋トレメニューを見ながらトレーニングをしたり、アニメや映画を見ながらの「ながら筋トレ」をガチめにできます。
……と、トレーニングルームの全容を紹介してきましたが、これだけの器具が普通のフローリングの上に置かれていると一日で傷だらけになると思います。
そこでわが家では、床を数cm下げてジョイントマットを敷き詰めました。
マットの下はこんな感じ。写真上部のリビングの床に比べると、少し下がっているのがわかるかと。
歳を重ねてウエートトレーニングがしんどくなってきたら、ジョイントマットの代わりに畳を敷いて主寝室にしようと思っています。きっと2階の寝室に上がるのもしんどくなっていると思うので……。
ちなみに壁紙は映画『Fight Club』をイメージしてコンクリート打ちっ放しのような柄にしました。
補強した箇所や器具などを合わせると、トレーニングルームを完成させるためにかかったオプション費用は40万円くらいでしょうか。
ジムに通うとなると2人で月2万円くらいはかかってしまうので、2年弱で元は取れました。
リビングの横に配置したことで使用頻度も上がり、ここ数年は体調不良時を除けば一日も欠かさずトレーニングできています。ホームジム、控えめに言って最高です!
ペットが快適に暮らせる空間を目指して
ここまででもかなりの文字数ですが、まだ一部屋しかまともに紹介できていませんでした。次はわが家のもう一つの見どころである「ペットと暮らす空間」について紹介します。
結婚前から夫が飼っていた猫のきなこがのびのびと暮らせるよう、家を建てたら大きめのキャットタワーを買おうと決めていました。
そして注文住宅なら壁面にキャットステップなんぞ付けられたらいいなーと、打ち合わせ時にそれとなく言ってみたところ、設計士さんのやる気スイッチがON。
猫が安心して歩ける板幅や上下運動しやすい間隔などが考慮された、渾身のキャットウォークやキャットステップが完成しました。
キャットタワーから上がり、2階にある寝室へとつながる動線に。寝室には小さな窓を取り付けているので、自由に行き来できます。
構造上必要な梁も、猫が行き来できるように照明を梁の下部に設置しています。
また、以前住んでいた賃貸ではリビングルームにトイレを置いていたので、常に臭いが気になっていました。
そこで、24時間換気システムがついている洗面所に犬猫のトイレスペースをビルトインすることに。床はツルッとしたクッションフロア(フロアシート)なので、多少飛び散ったり汚れたりしても掃除しやすくて便利です。
寝室やトイレのある洗面所はペットが自由に出入りできるように、「ペットくぐ~る」というペット用ドアを取り付けました。
大きめのサイズにしておいたので、猫はもちろん、犬でも問題なく通れます。
ペットが主に過ごすリビングの床は、後からタイルマットを敷いて滑らないようにしました。
元々は傷に強いというペット用のフローリング材にしていたのですが、20kgの犬2匹の遊びは本当にパワフルで、あっという間に傷だらけに……。
毎日の追い駆けっこで滑ったりして関節への負担も気になっていたので、全面タイルマットを敷き詰めたのは正解でした。一つひとつは正方形のマットなので、粗相したときでも汚れた部分だけ外して水洗いできるので衛生的です。
遊びが激し過ぎて目で追えないレベル
あとはめそめそやソフスが外で遊べるよう、柵で囲った庭もあります。5月には色とりどりのバラが咲く自慢の庭なのでぜひともお見せしたいところなのですが、プライバシーの観点から割愛させてください。
個室のワークスペースで集中力UP
このままだと毎日筋トレしてペットと戯れているだけの女と思われそうなので、ここで仕事もちゃんとしているアピールをしますね。
私は家で仕事をしているので、1階に専用の仕事部屋を設けました。
職業柄、黙々とMacとにらめっこしていることが多いのですが、Webサイト制作についてのオンラインスクールで講師もしていたりします。仕事部屋がなかったころは授業中に猫が乱入したり、犬の鳴き声が聞こえたりと集中しづらかったので、個室は大変快適です。
家での仕事はオン・オフの切り替えが大事なので、仕事部屋は集中力を高めるといわれている水色の壁紙を採用しています。
ちなみにモニター側の壁紙は、大好きなムーミンがさりげなくデザインされたもの。自分のための空間なので、“好きなもの”も大事にしました。
ユニークなシルエットのこちらは「ジェリーフィッシュチェア」というバランスボールが中に入ってる椅子です。
ぷよんぷよん弾みますが、軸は固定されているのでころころ転がったりはしません。座りながらおしりをふりふりしてみたり、両足を上げて腹筋を鍛えたりしながら作業できちゃいます。
ここでもトレーニング……!背筋も伸びて仕事も捗(はかど)るスグレモノです。
仕事部屋のドアを開けるとすぐの場所には、インターフォンを設置。ネットで買い物をすることが多いので、仕事中でもスムーズに来客対応できるようにしました。
空間の「余裕」が新たな趣味のきっかけに
下は私のSPECIALIZED Aethos
玄関には広くはありませんが土間があり、ロードバイク置場となっています。
ただこの土間は元々計画していたものではありませんでした。夫が花粉症で、賃貸時代から洗濯物を部屋干ししていたため、1階にランドリールームをつくる予定だったのです。
しかし間取図の作成段階で「乾燥機を買えば専用のスペースをつくる必要もない」と考え、余ったスペースを急きょ土間にすることに。
最初は特に用途も決めていませんでしたが、空間に余裕が生まれたことで、夫が以前から「いつか欲しい」と考えていたロードバイクを購入。
各地のロードバイクイベントに参加する夫についていくうちに私も興味をもち始め、昨年から私も乗り始めました。これからは一緒にイベントを楽しむ予定です。
「好き」と「使いやすさ」を両立できた、宝箱のような家
この家が完成して2年半ほど。新たにロードバイクという趣味を始めたため、土間はもう少し広くしても良かったかなぁとは思いますが、それ以外は満足しています。
おそらくもう一度家をつくるとなったとしても、基本的には同じ構造になる気がします。この家は大切な家族みんなが幸せに暮らせるよう工夫を詰め込んだ宝箱のような存在。みなさんの宝箱づくりの参考になれば幸いです。
🏠 いろんな「趣味と家」🏠
● 自転車が好き→「土間」が最高!
● 本で床が抜けそう……→「書庫」が欲しい!
● 気軽にサ活したい→家に「サウナ」をつくろう!
著者:Mana
日本で2年間グラフィックデザイナーとして働いた後、カナダ・バンクーバーにあるWeb制作の学校を卒業。カナダやオーストラリア、イギリスの企業でWebデザイナーとして働いた。現在はWebサイト制作のインストラクターとして教育にも携わっている。著書『1冊ですべて身につくHTML & CSSとWebデザイン入門講座』『ほんの一手間で劇的に変わるHTML & CSSとWebデザイン実践講座』はCPU大賞 書籍部門の大賞を受賞。他に『1冊ですべて身につくWordPress入門講座』(すべてSBクリエイティブ)がある。
サイト:Mana's Portfolio Website / Webクリエイターボックス
Twitter:@chibimana / @webcreatorbox
編集:はてな編集部