快適な生活を送る上でコンセントをどの位置に設置するかは大切なポイントです。新築の住宅を建てるときは建築段階でコンセントの位置をしっかりと決めておくのが理想です。無垢スタイル建築設計の石井渉さんに、失敗しないコンセント位置や部屋ごとのコンセントのレイアウトについて話を聞きました。
コンセントの役割
家電製品などに電源を供給するため、建物の壁や床に固定されたプラグの差し込み口のことをコンセントといいます。日本の住宅では100V用のコンセントが一般的で、国内で製造販売されている家電製品のほとんどが100V用につくられています。また、海外に行くとコンセントから供給される電圧が日本とは異なるため、変圧器を持って行く必要があります。
「近年はコードレス式の家電製品が増えています。そのため、コンセントは家電を繋ぎっぱなしにしておくものとは限りません。コードレス掃除機やスマートフォンの充電場所として捉え、住む人の使いやすさを考慮してコンセントの位置決めをする必要があります」(石井さん、以下同)
コンセントの種類
コンセントと一口に言ってもさまざまな種類があります。それぞれの形状や特徴について解説します。
単相100V
一般家庭で最も使用されているコンセントは単相100Vという種類です。差し込み口が2つあり、よく見ると左側よりも右側の穴のほうが小さくつくられています。電圧がかかっているのは右側のみで、左側は地面に繋がって電気を外に逃がす役割があります。スマートフォンや掃除機、パソコンなど家電の多くは単相100Vのコンセントに繋いで問題なく使用できます。
単相200V
大きな電力を必要とするエアコンやIHクッキングヒーターなどで使用されるコンセントです。単相100Vと単相200Vのコンセントは形状が異なりますが、かかる電気料金に差はありません。入居後に100Vから200Vのコンセントに変更する場合は工事費用がかかるため、どこに200Vのコンセントを設置するかを建築段階でよく検討したほうがよいでしょう。
USBコンセント
スマートフォンなどUSB対応機器の充電ができるUSBコンセント。電源アダプターを使わずにUSBの充電ができ、ワークスペースなどに設置すると便利です。
接地(アース)極付きコンセント
洗濯機や食洗機、電子レンジ用のコンセント。アース線が付いている電化製品のプラグは接地(アース)極付きのコンセントに差し込む必要があります。過剰な電圧を地面に流し、感電や漏電を防ぐ役割があります。
テレビコンセント
アンテナ端子が付いた、テレビ専用のコンセント。建築段階でテレビの種類や、設置する位置が決まっていれば、配線しやすいようにコンセントを設置することができます。
屋外用コンセント
屋外照明や防犯カメラ、掃除機などに使える屋外用コンセント。バーベキューやガーデニングなど、アウトドアで電源を確保したいときにも便利です。雨で濡れないように防水カバーが付いています。
床下コンセント
リビングやダイニングの床に設置すると便利な床下コンセント。ダイニングテーブルでパソコン作業をしたりIH調理機器を使ったりする際に重宝します。壁から離れた場所でも電源を確保できる良さがあります。
コンセントの設置後によくある後悔パターン
2022年8月にリクルートが実施したアンケート調査によると、家づくりで失敗したと不満を感じる点はコンセントに関することが第1位でした。実際にどのような不満があるのか、具体的に解説していきます。
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数が少なすぎるor多すぎる
「コンセントの数不足はよくある失敗談です。必要な場所にコンセントがないために延長コードや電源タップを使用することになり、部屋が雑然とした印象になってしまうケースもあります。反対に、コンセントをたくさん付けすぎてしまい結局使わなかったという後悔パターンもあります」
コンセントの必要な数は建築段階でよく考えて決めておくことが大切。多すぎず少なすぎず、ライフスタイルに合った数を見極めましょう。
空間のノイズになってしまった
「コンセントが目立つ場所にあると空間のノイズになり、デザインを妨げやすいというデメリットがあります。特に濃い色のクロスの上にコンセントを付けると目立ちやすいので気をつけたほうがよいでしょう」
コンセントを設置するとどうしても生活感が出てしまいます。位置決めや壁の素材選びなどでコンセントが目立たないよう工夫しましょう。
高さが合わずプラグが差し込めない
「特別な希望がなければ床から25cmほどの高さにコンセントを設置するのが通例です。冷蔵庫や洗濯機などの大きな家電を置く場所には、買い換えても困らない高い位置にコンセントを設置するようにしていますが、特殊なデザインの家電を置いた場合に高さが合わず、プラグが届かないというトラブルが発生したこともあります。家電や家具の大きさが分かる場合は、建築段階で施工会社に伝えておくことでこういったトラブルを防ぐことができます」
コンセント位置の決め方は? ポイントを解説
次に、コンセントの位置を決めるときに気をつけたいポイントについて解説していきます。
家電の種類と使う場所やタイミングを整理する
「コンセントの位置を決めるときは、家電の種類や使う場所、使うタイミングなどを書き出してみてください。いつ・どこで・何を使うのかによって最適なコンセントの位置や数は変わってくるからです」
サーキュレーターやホットカーペットなど、季節限定で使う家電も忘れずにリストアップしましょう。また、ほとんど使わない家電もあれば1日に何回も使う家電もあるはずです。そういった情報もすべて書き出しておくと、コンセントの位置を計画するときに役に立ちます。
コンセント位置の希望は着工前に伝えるのがベスト
「施工会社によって打ち合わせの流れは異なりますが、コンセントの位置について相談するのは着工前がベストです。できれば図面を作成する段階で希望を伝えるようにしましょう。工事が進んでからコンセントの位置を変更したり追加したりすると、配線が変わるため余計な工事費用が発生する可能性があります」
設備や素材を工夫して空間のデザイン性を保つ
「コンセントが目立たない色の壁紙を使ったり、デザイン性の高いコンセントカバーを取り入れてみるのもおすすめです。コンセントが目立ちにくくなり、空間に調和します」
壁にニッチを設け、その中にコンセントを収納してしまう手法もあります。飾り棚のように設計すれば、スマートフォンやスマートウォッチ等の充電スペースにもなります。
おすすめのコンセントの位置を家電別・部屋別に解説
エアコン
エアコンの下にコンセントがあると配線が垂れ下がってしまうので、本体の上部や天井にコンセントを配置すると見た目が綺麗です。エアコンの取り付けを施工会社が行う場合は、本体とコンセントの位置関係についても打ち合わせができるとよいでしょう。
壁掛けテレビ
「壁掛けテレビの裏側にコンセントを設置すると、テレビ本体に隠されてすっきりとした見た目になります。メーカーごとに背面に取り付ける金具の種類が異なるため、着工前にテレビの種類が分かっている場合は施工会社に伝えておきましょう」
洗濯機
「洗濯機のコンセントの位置は、一般的には床面から1m10cmくらいの高さになります。この高さであれば、縦型でもドラム式でも問題なくプラグを繋ぐことができます」
コンセントが水栓と近すぎたり床面に近い場所にあると漏電の危険性があります。安全かつ使いやすい位置を検討しましょう。
キッチン
「キッチンはコンセントの位置決めが特に難しい場所です。使っているキッチン家電の数や種類は家庭ごとに異なるため、最適な位置や数も家庭ごとに違います。カウンターやカップボードの上に常に出しておく家電もあれば、ホットプレートのように使うときだけ取り出す家電もあります。普段使うものとそうでないものを明確にし、生活しているときの様子をシミュレーションしてみることで最適なコンセントの位置が決まってきます」
リビング
リビングは家族だんらんの場所であり、家の中心ともいえる部屋です。みんなが使いやすいようにコンセントの位置を決める必要があります。
「ダイニングテーブルの下に床用コンセントを設けると、テーブルの上でホットプレートを使うときに便利です。ロボット掃除機の収納スペースと一緒に充電用コンセントを設けるのも人気のスタイルです」
寝室
寝室では、スタンドライトを使用したり携帯電話を充電したりするコンセントが必要です。また、空気清浄機を使う場合は設置場所の近くにコンセントを設けると便利です。
「ベッドの配置によってコンセントの最適な位置は変わってきます。寝室の理想のレイアウトが決まったら、なるべく早めに施工会社に伝えたほうがよいでしょう」
洗面所
ドライヤーや電気カミソリ、電動歯ブラシなど多くの家電を使用する洗面所。ヒーターや扇風機を使う人もいるでしょう。洗面台のまわりと足元にコンセントを設置するのが一般的ですが、家族が使うアイテムをリストアップしてコンセントの位置を決めるとよいでしょう。
屋外
「庭でバーベキューをしたり、イルミネーションを設置したい場合は屋外にコンセントを設けると便利です。屋外のコンセントは防水カバーが付いているので雨による漏電の心配はありません」
コンセントの位置を工夫した、暮らしやすい注文住宅の実例を紹介
ここからはスーモカウンターに相談して、コンセントの位置に工夫を凝らしたマイホームを建てた先輩の実例を紹介します。便利でおしゃれな家づくりのヒントにしてください。
【case1】ソファーでくつろぎながらスマホを充電できる床下コンセント
結婚して3年が経ち、家づくりを考え始めたTさん夫妻。夫の単身赴任の可能性を考慮し、家族が安心して暮らせる耐震性の高い家をつくりました。SNSの情報も取り入れ、便利なアイデアを各所に取り入れました。リビングに設置したソファーの近くには床下コンセントを設け、くつろぎながらスマートフォンの充電ができるように。夫妻のこだわりが詰まった理想のマイホームができ上がりました。
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耐震性、家事の時短、靴収納など夫婦のこだわりをすべて実現した家
【case2】コンセントをたくさん付けた便利なワークスペース
勤務先からの家賃補助が切れるタイミングを目前に、新築の注文住宅を検討し始めたMさん一家。各自の個室の壁紙を変えるなどこだわりを盛り込み、ステイホームが楽しいと思える家が完成しました。ブルーの壁紙がおしゃれな夫の書斎兼寝室は、コンセントをたくさん設けてテレワークにも対応しやすい空間にしました。家にいながら仕事にも集中できます。
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吹抜けリビングの大空間に登り棒を設けた、遊び心いっぱいの家
【case3】リビングにお掃除ロボットの定位置を確保
結婚して2年経ち、生活が落ち着いてきた頃に家づくりに踏み切ったMさん夫妻。ゆったりと落ち着いて暮らせるマイホームを理想とし、使い勝手やメンテナンスのしやすさにもこだわった住まいが完成しました。リビングに設えた収納の下のスペースをロボット掃除機の定位置にし、充電ができるコンセントを設置。扉の下部を空けたことで、自動運転もスムーズになりました。
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日々のメンテナンスのしやすさにこだわった、長く心地よく過ごせる住まい
【case4】コンセント付きのニッチをLDKに設置
夫の両親との同居を視野に入れて家づくりを始めたTさん夫妻。明るく広々としたLDKにはこだわりがたくさん詰まっています。ダイニングにはコンセント付きのニッチを設け、ダイニングテーブルの上でホットプレートを使うときや、パソコン作業をするときにも便利な設計に。家族みんなが快適に暮らせるマイホームになりました。
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思い通りにできたシンプルな佇まいの切妻屋根がかわいい家
新築の家にコンセントを設置するときのポイント
最後に、新築の家にコンセントを設置するときのポイントを石井さんに聞きました。
「コンセントは住宅完成後にも後付けすることはできますが、壁紙を張り直したり配線を変えたりする必要があるためコストがかかります。できるだけ新築時に必要なコンセントを設け、長く使えるようにしたほうがよいと思います。そのためにも、家の中のどの場所で何の家電を使うのか、具体的にシミュレーションしておくことが大切です」
便利で快適な住まいを実現するためにも、コンセントの位置決めは重要です。施工会社とよく打ち合わせをし、必要な場所にコンセントを設けられるようにしましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
家電が使いやすい便利な注文住宅をつくりたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。アドバイザーがお客さまの家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの? という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
取材協力/石井渉さん
取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/青山京子