アクセントウォールを使用すると、空間にメリハリが生まれおしゃれな雰囲気を演出できます。TOMIKEN一級建築士事務所の富田樹さんにお話を伺い、新築の注文住宅にアクセントウォールを取り入れる際のコツをまとめました。人気の素材や色、設置におすすめの場所なども実例と併せて紹介します。
アクセントウォールとは?
はじめに、アクセントウォールの定義や特徴について解説します。
「アクセントウォールとは、壁の一部を異なる素材や色で設えて空間のアクセントにする手法です。壁の一部に異なる色や柄のクロスを張るアクセントクロスも、アクセントウォールの一種と考えられています。
テレビの後ろの壁や玄関ホール、外観の一部など目を惹きたいポイントに取り入れることでアクセントとして活かすことができます。また、壁の素材や色を変えなくても、見せる収納や観葉植物などを壁に設置して立体感のあるアクセントウォールにするのも手法の一つです」(富田さん、以下同)
アクセントウォールは室内だけでなく外観に取り入れることも可能です。外壁の一部に異素材を組み込むことで、意匠性が高まります。
アクセントウォールを設けるメリットは?
空間にメリハリがついておしゃれになる
「アクセントウォールの魅力は、素材や色の力によってメリハリのあるおしゃれな空間演出ができること。天然素材を取り入れて高級感を出したり、外壁材を内装のアクセントウォールに使ってオリジナリティを出したりといった演出をすることも可能です」
フォーカルポイントをつくり広がりを演出できる
目を引くポイント(フォーカルポイント)をつくることで、空間の広がりや開放感を演出する効果があります。アクセントウォールを上手に取り入れることで、空間が広々とした印象になります。
「テレビの背面や、玄関を開けたときにすぐに視界に入る壁など、どこをフォーカルポイントにするかも重要です。担当設計者など、プロのアドバイスをもとにアクセントウォールの配置を計画しましょう」
DIYでも設置できる
アクセントウォールはDIYでも設置可能です。コストカットをしたい場合は自分でアクセントウォールを施工する選択肢もあります。
「DIYでアクセントウォールをつくる際は、素材の重さに注意しましょう。石など重量のある素材を使用する場合、壁が重さに耐えられない可能性があります。重量のある素材に対応するためには、建築段階から計画的に壁をつくることが大切です。事前に建築会社に相談してみましょう」
怪我や事故の予防になる
「アクセントウォールを段差など注意が必要な場所に取り入れることで、躓きや転落事故を予防することができます。段差部分にアクセントウォールを取り入れれば躓きの予防に、段差の手前の床の一部にアクセントウォールを設ければ転落予防になります。段差がない場所での躓き予防のために、視線の先にアクセントウォール を取り入れる手法もあります。特に高齢者や小さなお子さんがいる家庭では、安全のためにアクセントウォールを取り入れるのもおすすめです」
アクセントウォールを設けるデメリットは?
素材やデザインによっては手入れが必要
「凹凸の多い素材や凝ったデザインの場合、ほこりや汚れがたまりやすいのでこまめな手入れが必要です。また、家の外観にアクセントウォールを採用する場合は雨水の影響も考慮して耐水性の高い素材を選びましょう」
費用がかかる
シンプルなクロスだけで空間をつくるよりも、アクセントウォールを取り入れたほうが費用がかかります。使用する素材によって金額幅があり、選択肢も多いので予算に合わせて好みの素材を選ぶとよいでしょう。一般的に、フェイク素材よりも天然素材のほうが高額になる傾向があります。
組み合わせによっては空間が雑多な雰囲気に
「異素材の組み合わせや、アクセントの比率を誤ると空間が雑多な雰囲気になってしまうので注意が必要です。使用する素材や、どこにアクセントウォールを設けるかを決める際は、建築会社のデザイナーや設計者と相談しながら決定することをおすすめします」
アクセントウォールの比率を考える際は、色の配色比率である「ベースカラー70%:メインカラー25%:アクセントカラー5%」が参考になります。アクセントウォールも全体の壁の5%程度の比率にとどめるとバランスがよいと考えられています。しかし、色や素材の組み合わせ次第ではアクセントウォールの比率を増やして空間をおしゃれに見せることも可能です。使いたい素材や取り入れたい空間のイメージをプロに伝え、すり合わせていくようにしましょう。
人気のアクセントウォールの素材や色は?
人気の素材
石や木などの自然素材
空間に高級感をプラスしたい人には石材や木材、レンガといった自然素材が人気です。木目調、石目調のクロスなどを使用してアクセントにすることもできますが、本物と比較したときに高級感ではやや劣ります。
モルタル
スタイリッシュなモルタルも人気の素材。空間を引き締め、クールな雰囲気を演出できます。DIYでも扱いやすく、耐久性の高さも魅力です。
タイル
艶や色味など個性豊かなデザインが揃うタイル。異なる色を組み合わせるとオリジナリティのあるアクセントウォールになります。モザイクタイルと呼ばれる小型のタイルや、丸型や多角形型などユニークな形のものまであり、さまざまなデザインを楽しめます。
SOLIDO
SOLIDO はセメントを主な原料とする素材。セメント特有のかっこいい風合いを空間に取り入れることができます。外壁だけでなく、内装、屋内の床でも使われています。
漆喰
漆喰は消石灰(水酸化カルシウム)を主原料とした壁材です。耐火性に優れ、調湿や消臭効果が期待でき「呼吸をする素材」ともいわれています。素朴で温かみのある素材感は木材や石とも相性がよく、和室と洋室どちらにも馴染みます。
人気の色
グレーやブラウンなどナチュラルカラーと呼ばれる落ち着いた色や、天然素材の色味や風合いをそのまま活かしたアクセントウォールが人気です。
クロスやタイルの場合は、クールな雰囲気を演出できるブルーグレー、ナチュラル素材と相性のよいモスグリーン、上品な雰囲気が出るネイビーなどがよく選ばれています。
【実例付き】アクセントウォールはどこに設ける?
リビング
「リビングは住まいの中で最も長い時間を過ごす場所。デザインにこだわりたいと考える人は多いものです。ダイニングやキッチンと一体になっているリビングの場合は、空間に統一感を持たせることがポイントです」
どんな雰囲気のリビングにしたいのかを決めた上で、アクセントウォールの位置や使用する素材を決めるとよいでしょう。
テレビの背面
テレビの背面はリビングの中でも特に目が行きやすい場所です。アクセントウォールをうまく取り入れると、空間がおしゃれな雰囲気になります。鮮やかな色彩の壁にするとテレビを見るときに落ち着かないので、グレーやベージュなどできるだけ落ち着いた色にするのがポイントです。
玄関
「玄関はお客様を迎える場所なので、リビングと同じくデザインに凝りたいという方が多いです。玄関ホールの側面の壁や、玄関を開けたときに見える正面の壁にアクセントウォールを使用すると空間が華やかな雰囲気になります。また、玄関の外側と内側の壁に同じ素材を使用して連続性のあるアクセントウォールにするとインパクトのある空間に仕上がります」
外観
室内だけでなく、外観にアクセントウォールを設えることも可能です。サイディングなどの外壁の一部にタイルを張るなど、異なる素材の掛け合わせによって家の見た目に個性を演出できます。石やレンガなど立体感のある素材は光が当たることで陰影がつき、天候や時間帯によって違う雰囲気を楽しめるでしょう。
その他
そのほかにも、トイレや寝室、書斎などプライベートな場所に好みのアクセントウォールを取り入れるのも人気の手法です。
また、壁一面に施工しなくても、ニッチの内側やキッチンカウンターの一部など、少ない面積にアクセントとなる素材を使用するだけで意匠性の高い空間になります。
アクセントウォールを取り入れておしゃれな家にするためのコツは?
内装やインテリアとの統一感を意識する
「アクセントウォールと内装やインテリアのデザインがバラバラだと落ち着かない空間になってしまいます。空間全体の色調やデザインの統一感を意識するとおしゃれな住まいになります」
人の視点を意識して場所を決める
「せっかくアクセントウォールをつくっても、あまり目が行かない場所に設えたのでは空間のアクセントとして機能しません。人の動線なども考慮し、どこに目が行きやすいかを考えた上で施工するのがおすすめです」
アクセントウォールを効果的に取り入れたい場合は、施工実績が豊富な建築会社に依頼すると安心です。
機能性の高い素材も選択肢に
調湿、脱臭効果のある壁材や漆喰(しっくい)などをアクセントウォールに採用することも多いです。デザイン性だけでなく、機能性も考慮した上で素材を選ぶと心地よく暮らせる家になります。
予算で悩んだら面積を小さくする
大きな壁一面をアクセントウォールにすると、それだけコストがかかります。予算で悩んだ場合は、施工面積を小さくする選択肢もあります。建築会社と相談の上、アクセントウォールの面積や場所を決定しましょう。
アクセントウォールを使って理想の家を完成させた先輩たちの実例
【Case1】調湿機能に優れたアクセントウォールをリビングに
子どもの誕生をきっかけに注文住宅を建てたSさん。リビングの壁に調湿作用のある壁材を採用し、おしゃれに仕上げました。壁の上部にはスポット照明を設け、光が当たるとタイルの陰影が浮かびあがります。家族がゆったりと過ごせる居心地のよい空間ができあがりました。
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【Case2】グレーのアクセントウォールで玄関ホールをスタイリッシュに
夫の両親と一緒に暮らす二世帯住宅を建てることにしたIさん夫妻。プライバシーに配慮しつつ、それぞれのこだわりを詰め込んだ素敵な住まいが完成しました。二世帯共通の玄関はバリアフリー仕様の大空間。正面の壁にグレーのアクセントウォールを設け、スタイリッシュに仕上げました。
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【Case3】空間にアクセントを取り入れてメリハリを
結婚して1年半ほど経ち、将来のことを考えて家を建てることにしたSさん夫妻。デザインにもこだわり、空間にメリハリをつけるために所々にアクセントクロスを取り入れました。リビングのテレビの背面には調湿・脱臭効果のある壁材を採用。心地よく過ごせるリビングになりました。
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アクセントウォールで失敗しないためのポイント
最後に、アクセントウォールで失敗しないためのポイントを富田さんに伺いました。
「アクセントウォールを取り入れると意匠性の高い空間をつくることができます。しかし、無計画に設えたのではせっかく取り入れてもアクセントとして有効ではありません。アクセントウォールを取り入れるときは、使う素材や配置が重要になります。どんな空間にしたいのかイメージを固めた上で、適切な素材、そしてアクセントウォールの配置を決めましょう」
スーモカウンターに相談してみよう
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イラスト/松田奈津留