希望を盛り込める注文住宅は費用が高いと思われがち。ところが、設計や建材選びができる分、工夫次第でコストを抑えることもできる。とはいえ、限られた予算の中でも大満足の家を建てたい。そのためにはどこをどう工夫すればいいか解説し、実例も紹介します。
土地でコストダウンする方法
住宅を新築する場合、「土地・建物・設備」の3つのポイントでコストダウンできます。まずは、土地でコストダウンする方法について紹介します。
地盤が良い地域を探す
土地選びの際に重視したい点が、地盤です。地盤に問題がなく、建物を新築できる状態の土地なら、地盤改良費を節約できます。地盤改良費とは、地盤に問題がある土地を改良する際にかかる費用です。
・地盤調査で軟弱だと判明した土地
・埋立地
・過去に陥没したことがある土地
等に該当する土地は、地盤改良が必要です。改良にかかる費用は地盤によってさまざまですが、改良の方法によって、30万円~200万円程度かかります。
また、地盤調査をする場合は、調査する深さにもよりますが、一般的な住宅の場合、ボーリング調査を行うと、費用は20~35万円程度かかります。
高低差のある土地は避ける
新築する際に高低差がある土地を選択すると、土留めや擁壁工事が必要になるケースがあります。また、家に上がるまでの階段も別途設置する必要があり、その分費用がかかってしまいます。高低差の程度によっては必要になる費用が大きく異なることから、ハウスメーカーや工務店に相談することをおすすめします。
更地を選ぶ
土地選びの際に、更地を選ぶことでコストダウンにつながる場合があります。例えば、建物を解体して建て替えをする場合、古屋解体費がかかります。解体にかかる費用は、業者や構造、広さによって異なりますが、目安は坪単価3万~8万円程度です。
仮に、木造の延床面積30坪住宅を解体する場合は、解体に90万~150万円程度かかる計算になります。解体するよりも、最初から更地を購入したほうが、古屋解体費がかからなくて済みます。
探すエリアを広げる
土地選びをする際、エリアにこだわって選ぶ方も多いと思います。選ぶ基準はさまざまですが、一般的には以下が挙げられます。
・過去に住んでいて住みやすかったエリア
・通勤や通学に便利なエリア
・知人から勧められたエリア
探すエリアを広げることで、コストダウンにつながる可能性もあります。
土地探しをする前に、希望の坪単価や予算を決めて、希望に沿った形になるべく近づけるような土地選びをしましょう。
旗竿地などの変形地も候補に入れる
土地選びをする際、変形地も選択肢に入れておくと、コストダウンにつながる可能性があります。三角地や旗竿地などが例として挙げられます。
正方形や長方形の更地は人気が高くすぐに買い手がつくため、売れ残っている土地は高額なケースも多いです。しかし、旗竿地や三角地などの変形地は、形状が特殊なため、正方形や長方形の土地よりも安価で売りに出されるケースも少なくありません。旗竿地や三角地ならではの家の建て方もできるため、候補に入れると良いでしょう。
条件に優先順位をつけておく
土地選びでは、条件に優先順位をつけておきましょう。例えば、通勤や通学のことを考えた場合、職場や学校、駅・バス停からの距離から近いほど時間に余裕ができます。朝ゆっくりする時間が増えるので、通勤・通学利便性を優先したいという人も多いでしょう。
そのほかにも、スーパーが近い場所がいい、病院や郵便局は近いほうがいいなど、生活に必要な施設の希望もあると思います。土地代だけを見て考慮すると、いざ新築した際に不便を感じることもあるため、土地選びをする前にある程度希望条件を優先度順に精査しておくことが大切です。
建物・設備でコストダウンする方法
土地選びのほかに、建物・設備でコストダウンする方法もあります。
床面積を小さくする
床面積を小さくすることによって、建築にかかる建材や施工費をそのまま節約できます。必要のない部屋があると掃除の手間もかかります。快適な暮らしのためにどのくらいの広さが必要なのか、事前に考えておきましょう。
また、床面積を小さくすると、生活動線や家事動線が短くなり、暮らしが快適になるというメリットもあります。
上下階の床面積が同じ総2階建てに
延床面積が同じ100㎡でも、1階70㎡・2階30㎡の家と、1・2階とも50㎡の家では、後者が割安に。1階が広いと基礎工事の面積が広くなるのに加え、上下階の床面積が違うと屋根工事などが複雑になってしまうからです。
建物や屋根の形状をシンプルにする
建物や屋根の形状をシンプルな形にすることで、コストダウンにつながる可能性があります。屋根は建物のなかでも面積が広く、複雑な形状やデザインにするほど、材料費や施工費、人件費が高くなるからです。
凹凸の少ないシンプルな真四角に
床面積が同じでも、凹凸の多い家と真四角の家とを比べると、一般的に真四角の家のほうがコストダウンしやすいです。真四角に近いほうが、基礎工事、外壁、窓、屋根など、さまざまな箇所の材料費・工事費を減らすことができ、大きなコストダウンになります。
木造にする
建物の構造を木造にすることで、材料費・工事費用を抑えられる場合があります。国税庁が発表した「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)」によると、構造別の1㎡当たりの費用は、以下のとおりです。
・木造:17.7万円/1㎡
・鉄骨鉄筋コンクリート造:26.5万円/1㎡
・鉄筋コンクリート造:27.8万円/1㎡
・鉄骨造:27.2万円/1㎡
参考データ:「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)」の全国平均より作成
ほかの構造に比べると、木造が安いことがわかります。
ドアや扉を減らす
同じ面積でも、部屋数が多い家より、部屋数が少なくて1部屋1部屋が広いほうがコストダウンに。間仕切り壁やドアが少なくなる分、その材料費と工事費が浮きます。また、建具は1本数万円するのが一般的なので、収納扉をなくすこともコストダウンにつながります。
設備・建材をダウングレードする
例えばトイレを上下階に1つずつ設ける家が多くなってきましたが、来客も使う1階のトイレは最新型の多機能なものに、家族しか使わない2階のトイレは普及品で、というようにグレードを変えるケースも。ほかにも、1階は無垢(むく)材のフローリング、2階は合板などとメリハリをつけるケースもあります。特に床や壁は広い面積にわたるので、単価の差が少しでも、全体で見ると大きなコストダウンにつながることがあります。
設備はなるべく施主支給する
設備面でコストダウンを考えるなら、施主支給を利用する方法もあります。
施主支給とは、施主が自ら設備やパーツを仕入れることです。安価な設備やパーツを仕入れることで、コストダウンにつながる可能性があるため、方法の一つとして把握しておきましょう。ただし、施主支給に対応していない建築会社もあるので、事前の確認が必要です。
施主支給についてもっと詳しく→
施主支給とは? 向くもの、向かないもの、トラブル回避の注意点も紹介!
削ると後悔しやすいポイント
新築でコストダウンをすると、建築にかかる費用は削減されますが、場合によっては後悔することもあるので、それぞれ紹介します。
断熱材
断熱材を削減して等級を下げたり薄い断熱材を選んでコストダウンを図ると、外気温の影響を受けやすくなり、結果として断熱しづらくなるため後悔する可能性があります。
また、法改正に伴い2030年には断熱等級5以下の物件は建築できなくなります。
2024年現在でも、断熱等級4以上でないと、フラット35が借りられないので注意が必要です。
断熱性能が低いと、冷暖房設備を使用する機会も増え、電気代が高くつくことも。断熱材にも種類があり、等級や厚さなどから選べます。経年劣化や耐久性の面を考えても、自分たちが快適に過ごせる性能のある断熱材を選ぶようにしましょう。
セキュリティー面
プライバシー保護や防犯の観点から、セキュリティー面についてもコストは削減しないようにしましょう。防犯の観点でいえば、以下の設備が挙げられます。
・カメラ付きインターホン
・センサーライト
・監視カメラ
・シャッター
・面格子
・窓ガラスの性能を上げる
これらの設備は必須ではありませんが、防犯対策では用意しておきたいところです。
水回りの設備
生活には欠かせない、キッチンや洗面所、浴室、トイレなどの水回り設備。これらのグレードを下げて、コストダウンを図ろうとすると、後悔することがあります。
グレードが下がるとその分機能も少なくなり、節水や節電ができないことも。また、生活の質にも影響が出ることがあり、快適な暮らしが損なわれてしまう場合もあります。
グレードを下げると、このような不満が出る恐れがあります。
「浴槽サイズを小さくしたら、リラックスできなかった」
「タンクレストイレをやめたら、トイレが狭くなった」
「ビルトイン食洗器をあきらめたが後付けしたら見映えが悪くなった」
設備でコストダウンを図る場合は、自分が思う快適な暮らしができる範囲内でバランスをとるようにしましょう。
屋根・外壁
屋根や外壁は、使用範囲が広いため、素材次第で大幅なコストダウンにつながります。しかし、極端に安価な材料を使うと塗装がはがれて劣化しやすくなったり、雨漏りなどのリスクを高める可能性もあります。その結果、高頻度でメンテナンスが必要になり、トータルで見るとコストが高くなってしまうことも。
もちろん、経年劣化に伴い、屋根や外壁は定期的なメンテナンスが必要ですが、素材のグレードに比例してメンテナンスが必要な頻度などは変わります。素材の選定の際は、メンテナンスも視野に入れて検討しましょう。
実例紹介*コストダウンの工夫をしつつ大満足な家を完成させた先輩たちの家を見てみよう
コストダウンの工夫は人によってさまざま。先輩たちの実例を見ながら、コストを抑えても満足できるポイントを学ぼう。
●実例1:内装や設備まで、好きなものを詰め込んだ住まい
長女の小学校入学を機に家づくりを決心したNさん。好きなテイストが得意な依頼先とは条件が合わず、行き詰まっていたとき、スーモカウンターへ。希望の予算を伝え、条件に合う会社をいくつか紹介してもらい、気に入った1社に見積もりとプランを出してもらい、とんとん拍子に進みました。
依頼先の決め手となったのは、キッチンや洗面ボウルなどの設備を自由に選べて、施主支給が可能なこと。海外メーカーのサイトやカタログを見て、キッチンのタイルやトイレの洗面ボウル、キッチンの水栓金具など、1つずつこだわり抜いて選びました。
さらに内装の漆喰や塗料は、コストダウンを兼ねて自分たちでペイント。「大変でしたが、楽しい思い出に(笑)。自分で手を動かすことで、わが家への愛着も、より強くなった気がします」
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内装や設備まで、好きなものを詰め込んだ住まい
●実例2:40代後半で思い立った家づくり。広いガレージとキッチンを実現
40代後半で家づくりを考えたIさん。スーモカウンターに相談し、会社を紹介してもらった後、一度は家づくりをあきらめかけたのだそう。ところが「一緒にコストダウンを考えていきませんか」という最終候補だった1社からのメールに背中を押され、計画を再開。予算オーバーをしないよう、こだわるところにはお金をかけ、それ以外はコストダウンすることにしました。
「夫はガレージのシャッターをオーバースライダータイプから普通の電動シャッターに。私も、アイランド型のキッチンが希望でしたが、オープンタイプの対面式に。それでも、リビングと玄関の床は夫の希望でむく材にしたり、トイレは私の希望で掃除がラクな機種にしたり。プランには満足しています」と妻。当初の希望通り「広いガレージとキッチン」がある家になりました。
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40代後半で思い立った家づくり。広いガレージとキッチンを実現
●実例3:耐震性と間取りにはこだわりつつも、大胆にカスタマイズした遊び心あふれる住まい
家賃を払い続けるより自分の家を、とスーモカウンターに相談したHさん。とにかくローコストで耐震性の高い住まいを建てたいという要望を伝え、特徴の異なる4社を紹介してもらうことに。そのうち、自分たちの要望を細かく聞いてくれる姿勢に安心し、お願いする1社を決めました。
内装はコストを抑えるためにも極力シンプルにして、後から自分でアレンジ。ビビットカラーのクロスは住宅用ではなく店舗用から選ぶなど、こだわりを追求。「こうしたい!という思いは明確だったので、具体的なプラン・デザイン相談に関しても、とんとん拍子に進めることができました」
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耐震性と間取りにはこだわりつつも、大胆にカスタマイズした遊び心あふれる住まい
●実例4:壁紙やシャンデリアを自分で選んでコストダウンした念願のガレージ付きの家
「家賃を払い続けるのはもったいない」と思い、家づくりを意識し始めたHさん夫妻。
複数の住宅展示場を訪れたそうですが、情報が多すぎて混乱してしまいました。
そこで、公正な立場のプロに相談しようとスーモカウンターを訪れ、希望を伝えて、紹介された建築会社3社のうち断熱工事が基本プランに入っている会社と契約。
建築費を節約するために、シャンデリアや壁紙は自分たちで選んで設置したそう。また、太陽光発電を設置して電気代も節約しつつ、夫婦のセンスが詰まった家が完成しました。
建築会社から勧められて設置したソーラーパネルによる収入も家計の足しになってるそう。計9枚で3375kwh、設置費用は79万円でした。
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夫は念願のガレージを手に入れ、妻も全館空調や浴室乾燥機に大満足の家
●実例5:ものや仕切りを最小限にし、必要になったら足していく『足し算の家』でコストダウン
埼玉県の実家を建て替えることにしたKさん家族。新築の理想のイメージを持って近くの建築会社に行ったところ、予算を大幅に超えた提案をされて困惑しました。そこで、知人に勧められたスーモカウンターを訪問。自分たちの希望の間取りで柔軟な対応をしてくれる点や予算を伝えて、4社と面談。面談のたびにスーモカウンターのアドバイザーに相談し、納得できる会社と契約しました。
ものや仕切りを最小限にし、将来的に必要になったら足していく「足し算の家」にすることで、コストダウンを実現。
今後は広い壁面に好きなアートを飾るなど、自分好みの空間にしていくのが楽しみとのことです。
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好きなものだけを吟味して採り入れた『足し算できるシンプルな家』
●実例6:内装を自分たちで選び、コストダウンをかなえた平屋
休日にレジャー感覚で訪れた住宅展示場で平屋を見学したことをきっかけに、新築を計画し始めたFさん夫妻。いろいろな建築会社の情報を知りたいと思い、スーモカウンターへ足を運びました。
5社の建築会社を紹介してもらい、面談した1社の社長から「うちはローコストでは建てられません。しっかりした躯体にお金がかかりますから」と言われたことにも好感を持ち、依頼を決めました。
完成したのはヒノキの「見せ梁」が印象的な木造の平屋。依頼先の会社の方針で、内装は全て自分たちで選ぶことにより、コストダウンをかなえられたそうです。
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ヒノキの梁が清々しい、ロフト付きの平屋
スーモカウンターに相談してみよう
先輩たちの実例を見ていると、やみくもにコストを抑えるよりも、コストをかける部分・かけない部分のメリハリをつけることが満足度の高い家を建てるためのコツといえそう。自分たち家族のこだわりポイントを明確にして、コストを抑えて大満足の家を建てよう。
監修/SUUMO編集部(土地でコストダウンする方法、床面積を小さくする、建物や屋根の形状をシンプルにする、木造にする、設備はなるべく施主支給する)