注文住宅は人生における大きな買い物だからこそ、かかるコストについて慎重に考えたいものです。マイホームを建てた先輩たちは、どのようにコストコントロールをしたのでしょうか?リクルートが実施したアンケートの結果をもとに、銀行から借り入れた金額の相場や住宅ローンの種類、コストアップしてしまう理由とコストダウンのコツなどについて詳しく解説していきます。
注文住宅に必要な資金。先輩たちの借入額やローンの種類は?
注文住宅を建てた先輩たちは金融機関からどれくらいの資金を借り入れたのでしょうか?先輩たちの借入額やローンの種類を紹介します。
金融機関からの借入額は?
注文住宅を建てる際の借入額で最も多かったのが、「3000万円〜4000万円未満」で、全体の38.8%の人たちが該当します。次いで多かったのが「4000万円〜5000万円未満」(20.5%)、「2000万円〜3000万円未満」(20.3%)でした。
建てる家の規模やエリア、施主の年収によって資金計画は変わるものの、8割近くの人が2000万円〜5000万円の間の金額で借り入れを行っているようです。
家の購入額に対する借入額の割合は?
次に、家の購入額に対する借入額の割合についてもアンケートの結果を見ていきましょう。
最も多かったのが「借入額90%以上」で、全体の46.9%の人が該当しています。次いで「80~90%未満」(17.3%)、「70~80%未満」(13.9%)という結果になっています。
この結果から、注文住宅を建てた人の多くが、住宅購入価格の7割以上の金額を金融機関から借り入れていることが分かります。
住宅ローンは比較的低金利。そして控除が受けられるというメリットがあるため上限額まで借り入れを行う人もいます。住宅ローン控除(住宅借入金特別控除)とは、入居から一定期間は年末時点での住宅ローン残高の一部を所得税や住民税から控除される制度のことです。
利用している住宅ローンの種類は?
先輩たちが注文住宅購入費用の借り入れに利用している住宅ローンの種類についても見ていきましょう。
住宅ローンの金利のタイプは大きく分けて「固定金利タイプ」と「変動金利タイプ」の2種類がありますが、最も多かったのが「変動金利35年ローン」で、全体の52.3%の人が利用しています。借り入れ時の金利がずっと変わらない固定金利タイプに対し、変動金利タイプは、返済途中に借入金利が変動する可能性があります。
次いで多かったのは、28.6%の人が利用している「固定金利 35年【フラット35】」でした。【フラット35】は住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して融資しており、全期間固定金利型の住宅ローンになります。満70歳未満であることや日本国籍を持っていることなどの利用条件があるのも特徴です。
住宅ローンの名義は誰?
住宅ローンの名義を誰にするかで悩む人も多いと思います。アンケートによると、全体の59.8%の人が「夫のみ」、34.3%の人が「夫婦共有名義」、3.1%の人が「妻のみ」と回答。そのほかにも、「子ども名義」(0.3%)、「親子共有名義」(10%)という回答もありました。
住宅の購入予算や家族の働き方、相続税対策の有無等によっても家族に適したローンの組み方はさまざまです。リスクも考慮した上で慎重に判断しましょう。
注文住宅でコストダウンできる部分は?
家づくりをした先輩の大半が「当初の見積もりよりもランクアップ(コストアップ)、もしくはランクダウン(コストダウン)した部分があった」と答えています。先輩たちの声とともに、コストダウンしやすい部分について紹介します。
間取り
間取りは注文住宅においてコストダウンしやすい部分です。アンケートでも21.3%の人が間取りを変更して費用を節約したと答えています。部屋数を増やすと建築費用も高くなってしまうため建具を減らしてシンプルな間取りにしたり、コストが上がりがちな和室はつくらないといった選択をすることで費用を抑えることができます。注文住宅を建てた先輩たちも、以下のような工夫でコストダウンを図っています。
・「部屋の数や間取りを調整した」(鹿児島県・30代・男性)
・「小屋裏収納をなくした」(熊本県・20代・女性)
・「2階の間取りを最低限でシンプルなものにした」(愛知県・30代・女性)
・「洗濯物を干せる部屋をつくることをあきらめた」(佐賀県・20代・女性)
水まわり設備(キッチン・お風呂・トイレ)
水まわりの設備でコストダウンしたと答えた人も多く、トイレ(12.3%)、キッチン(10.3%)、お風呂(8.3%)でコストダウンしたという回答が集まりました。洗面台やユニットバスなどは、造作よりもメーカー品を設置したほうがコストを下げることができます。また、製品のグレードを比較してリーズナブルなものを検討したり、設備を自分で購入して設置する施主支給も選択肢の一つです。
床暖房
15.5%の人がコストダウンにつながった部分として挙げていたのが床暖房です。冬場に快適に過ごすことができる床暖房ですが、工事にかかる初期費用は数十万円以上と高額。また、ランニングコストもかかることから「床暖房を付けずに節約しよう」と考える人も少なくありません。
ただし、リフォーム時よりは新築時に設置したほうが割安となる可能性が高いので、入居後の生活や家族の意見も考慮しながらよく検討することをおすすめします。
・「床暖房は暮らしのことを考えて不要とした」(神奈川県・40代・男性)
・「床暖房はこの先の電気代を考えてあきらめた」(長野県・40代・女性)
家の構造
次に、13.5%の人がコストダウンのポイントとして挙げていたのが家の構造です。延べ床面積を減らしてコンパクトな家にしたり、シンプルな総二階の構造を選ぶことがコストダウンにつながります。また、外観を複雑な形状にするとコストが上がりやすい傾向があるため、できるだけシンプルな見た目の家にすることもポイントです。
・「床面積を減らした」(山形県・30代・男性)
・「ベランダに屋根を付けなかった」(東京都・40代・男性)
・「外構にこだわりがなかったので、極力シンプルでお金のかからないつくりにした」(東京都・30代・女性)
建材・床材・内外壁材
建物の建材や床材、内外壁材でコストダウンをしたという人も16.8%いました。基礎や断熱、耐震性に関わる部分はランクを落とすことはできませんが、内壁をクロス仕上げにしたり、部屋ごとに床材を変えて費用を予算内に収めるなど内装部分ではコストダウンできるポイントがいくつかあります。また、外壁や屋根も素材によって価格幅が広いため、プラン内で決められている素材を選ぶなど、リーズナブルな種類を選ぶことで費用を節約できます。
・「1階と2階の床の仕様を変え、親戚や友人が入る1階にはランクの高い床材を入れ、家族しか立ち入らない2階の床材にはランクの低い床材を入れた」(長野県・40代・男性)
・「子ども部屋やキッチンなど、汚れや傷が付きやすい場所は、床材をランクダウンさせた」(神奈川県・40代・女性)
・「外観をオシャレにするデザイン壁をなくした」(東京都・30代・女性)
エアコン・照明器具
回答者の中にはエアコンや照明器具の数を減らしてコストダウンを図ったという人もいました。また、エアコンや照明器具などの設備を施主支給にすることでリーズナブルな商品を自分で選ぶことができ、工事費用も安くなります。ただし、入居のタイミングで手に入らないこともあるので期間に余裕を持って探すとよいでしょう。
・「ダウンライトが高額だったので数を大幅に減らした」(佐賀県・20代・女性)
・「間接照明の数を減らした」(千葉県・30代・男性)
・「まだ使わない子ども部屋へのエアコン設置をやめた」(愛知県・20代・女性)
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ワンランク上の注文住宅にしたい!見積もりよりコストアップしやすい部分は?
次に、注文住宅をつくるときにコストアップしやすい部分についても、先輩たちの声と共に紹介します。
キッチン
26.5%の人が「当初の見積もりよりもコストアップした」と答えているのがキッチンです。掃除のしやすいものやハイグレードな設備を選んだことにより、見積もりよりもコストアップしたとのことです。
・「キッチンの換気扇を手入れしやすいものにした」(秋田県・30代・男性)
・「キッチンをフルフラットタイプにした」(滋賀県・30代・男性)
・「台所のコンロを自分が好きなものにした」(宮崎県・40代・女性)
・「キッチンのクリーンフードや水道は、手入れが大変なのでランクアップした」(兵庫県・30代・女性)
・「キッチンに人工大理石やタッチレス水栓を取り入れた」(千葉県・20代・男性)
お風呂
次に多かったのが「お風呂」という回答。毎日使う浴室を快適な空間にしたいという思いから、バスタブのグレードを上げたり、浴室を広めにしたりという人が多いようです。
・「主人がお風呂にこだわり、バスタブなども好きなものを選んだためコストアップした」(神奈川県・40代・女性)
・「お風呂は少し広めにし、デザインを好きなものにした」(宮崎県・40代・女性)
・「快適さ重視で風呂の広さを当初計画より拡大した」(埼玉県・30代・男性)
トイレ
トイレはほかの空間に比べてコンパクトな場所ですが、設備にこだわることでコストが上がります。手洗い場や収納を設けることで使いやすくなりますが、追加の建築費用がかかります。また、タンクレスにしたり床や壁材にこだわるなどデザイン性を重視することでコストアップする傾向があります。
・「トイレに手洗い場を設置したことでコストが上がった」(千葉県・30代・女性)
・「トイレに収納を付けた」(岐阜県・30代・女性)
・「標準仕様のトイレからタンクレス仕様にした」(埼玉県・20代・女性)
・「トイレの床材をタイルにした」(富山県・30代・男性)
間取り
間取りをシンプルにすることでコストダウンに成功した人がいる一方、間取りが理由でコストアップしたという先輩もいます。間取りは暮らしやすさに直結するポイントのため、妥協したくないと考える人も多いようです。
・「ランドリールームを拡張するために間取りを変更した」(富山県・30代・男性)
・「当初より大幅に収納が多い間取りにした」(神奈川県・30代・男性)
・「小上がりの和室を設置した。また、居住空間を拡充した」(東京都・30代・女性)
・「どうしてもあきらめきれないこだわりのある間取りや設備は必然的に高くなってしまった」(大阪府・30代・男性)
建材・床材・内壁外材
建材、床材、内壁外材にこだわってコストアップしたという先輩もいました。耐久性や快適さなどを考慮して素材を決める人も少なくありません。
・「室内壁にエコカラットを使用した。防音のため、床や天井にグラスファイバーを入れた」(大阪府・40代・女性)
・「猫を飼っているため床材をフローリングからクッションフロアに変更した」(滋賀県・30代・女性)
・「外壁を長持ちするタイプにした。光触媒コーティングも施した」(京都府・40代・男性)
・「こだわりのデザインの外壁に変更した」(愛知県・30代・男性)
・「外壁に厚みを持たせ、立体感が際立つようにした」(長野県・40代・男性)
太陽光発電
設置費用が高いことや売電収入の単価も下がっていることで躊躇してしまう人が多い太陽光発電。しかし、電気代の高騰や停電、災害時のことを考えて設置に踏み切った先輩もいます。停電しても電気を使うことができるので非常時にも安心です。
・「太陽光発電は迷ったが、日当たりが良い土地で、付けたほうがお得に暮らせると思った」(神奈川県・30代・女性)
・「太陽光発電は当初は付けないつもりであったが設置した。説明を聞いてメリットを感じたため」(新潟県・30代・男性)
ドアや窓
窓やドアが理由でコストアップしたという人もいました。断熱性を高めるために樹脂サッシや複層ガラスなどを取り入れたり、防犯性の高い玄関ドアや窓を選ぶことでコストも上がります。また、採光目的で窓の数を増やしたことにより建築費用がアップしたという例もあります。
・「1階の窓を防犯ガラスにした」(愛知県・20代・女性)
・「窓の数を増やした」(愛知県・30代・男性)
・「窓をトリプルサッシにした。玄関ドアにもこだわりコストアップした」(新潟県・40代・男性)
耐震性
日本に住む上で無視できない家の耐震性。アンケート回答者の中にも耐震構造にこだわりコストアップしたという人がいました。建築基準法により最低限守るべき耐震基準は定められていますが、特殊な工法によって、さらに耐震性を高めて地震に強い家をつくることも可能です。
・「建築時に耐震材を使いコストアップした」(東京都・40代・男性)
・「耐震・耐久目的で屋根や壁材をオプションの素材にした結果、コストアップした」(兵庫県・40代・女性)
見積もり金額との差額費用の捻出方法は?
先輩たちは当初の見積もり金額との差額費用をどのように捻出したのでしょうか。アンケートの結果を紹介します。
住宅ローンの借入額を予算よりも高くした
多くの人が予定よりも「住宅ローンの借入額を予算より高くした」と回答していました。注文住宅づくりで想定外の費用がかかるのは珍しいことではありません。多くの場合、建築段階の仕様変更を想定して予備費を加算した金額を借り入れます。また、住宅ローンはローンの本審査後は原則として増額をすることはできませんが、本審査前であれば増額に応じてもらえる場合もあるため、金融機関に早めに相談することが大切です。増額することで金利が上がるケースもあるため注意しましょう。
貯金を切り崩した
一度契約した住宅ローンは増額することができないため、途中でコストアップした部分は自分で捻出するしかありません。アンケートの回答によると「貯金を使った」という人もいました。
また、住宅の購入費用以外にも、ローンの頭金や印紙税や火災保険料などの諸費用も用意しておきましょう。
生活費を見直した
注文住宅を建てた先輩の中には、購入費用が見積もりよりも上がったため生活費を見直したという人もいます。プラスアルファの費用を捻出する可能性も踏まえ、住宅購入に向けて普段の支出を改めて見直し、貯蓄額を増やすことも大切です。
親に借りた
親にお金を借りたという人もいました。金融機関からの借り入れとは異なり利子の面でメリットがあるといえます。また、住宅の購入のために親や祖父母などからお金を受け取っても一定額までは贈与税がかからない「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」を利用すると、節税対策としても有効です。
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コストコントロールに成功した注文住宅の実例を紹介
ここからはコストコントロールに成功した先輩たちのマイホームの実例を紹介します。どのような工夫をして理想の家づくりにつなげたのでしょうか。ぜひヒントにしてください。
【case1】自分の好みを反映したセミオーダー住宅
子どもと二人で落ち着いて暮らせる家が欲しいと考えたシングルマザーのKさん。土地は購入したものの、貯金や頭金もなく、自分の年収で家を建てられるのか不安があったそう。Kさんの希望を受けた建築会社は、好みのテイストを反映したセミオーダー住宅を提案。ある程度の規格が決められているため費用は抑えられる一方、外観や内装、設備などは組み合わせが自由のため自分好みの家を建てることができました。
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【case2】高気密・高断熱が標準仕様の会社に依頼
実家の親子リレー住宅ローンを返済しながら、子世帯の家づくりに踏み切ったKさん。低予算で家を建てられる会社に依頼し、吹抜けのある開放的な一軒家が完成しました。Kさんの予算に近い費用で、高気密・高断熱仕様の建材が標準仕様となっていたことも会社選びの決め手となったそうです。
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【case3】照明の数を減らしたり自分で人工芝を張ったりして節約
親世帯と同居していたIさん夫妻は、自分たちの思い通りの新居で生活したいという思いから家づくりをスタートしました。不必要だと感じた照明を減らしたり、外構は自分で人工芝を張ったり、塀は知り合いの業者にリーズナブルな価格でお願いしたりとコストコントロールにも成功。資金面と時間の都合で未完成だという庭は、入居後に少しずつ手を加え、いずれは愛犬のためのドッグランをつくる予定だそうです。
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注文住宅のコストを考える際のポイント
注文住宅のコストコントロールは悩ましい課題ですが、間取りや設備等を調整することによって予算内で家を建てることは可能です。家づくりを進めていく中で「必要なもの」と「不要なもの」を明確にし、かかる費用の内訳を考えていくことも大切なポイントです。家づくりに成功した先輩の経験をもとに、ぜひ理想の暮らしや家づくりについてシミュレーションしてみましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
予算内で注文住宅を建てたいと考えている方は、ぜひスーモカウンターに相談してみませんか。スーモカウンターでは理想に合った会社探しをはじめ、アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
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<調査概要>
「注文住宅3年以内建築者調査」(リクルート調べ)
調査協力:楽天インサイト
調査実施:2022年8月
調査方法:インターネット調査
対象者:3年以内に注文住宅を建築した25歳~44歳の全国の男女
有効回答数:400名(うち、男性191名・女性209名)
イラスト/てぶくろ星人