一戸建てといえば2階建てが一般的だけれど、階段移動のない「平屋」を建てたいと考える人も。でも、快適さや費用など、平屋と2階建てはどっちがいい? メリット・デメリットについて、建築家の佐川旭さんに話を伺った。併せて先輩たちの事例も紹介しよう。
平屋を建てるメリットは「階段移動がない」「断熱・耐震性が高め」
平屋といえば、誰もが思いつくのは、階段移動がないこと。建築家の佐川旭さんによると「一戸建て住宅では2階に子ども部屋をつくることが多いですが、その家で子どもと過ごす時間より、子どもが巣立ったあとの生活のほうが長いケースが一般的。それからの生活を考えると、階段移動のないワンフロアの間取りで生活できるメリットは大きいでしょう」
階段移動がないというメリットのほかには「室内の温かい空気が2階に逃げにくいという点で、断熱性は平屋のほうが高め」になるのだそう。また「上に重いものが載らないという点で、2階建てより平屋のほうが耐震性が高まります」
あくまで工法や使用する部材、床面積などが同じ条件だった場合の比較となるが、断熱性や耐震性については、平屋のほうが高めになるのが一般的と言えそうだ。
平屋を建てるデメリットは「コストが割高」「採光・通風に注意」
では、平屋を検討する前に知っておきたいデメリットには、どんなことがあるのだろう。「まず、床面積が同じくらいの2階建てと比べたとき、広めの土地を必要とすること。さらに、大きな穴を掘ってコンクリートを流し込む基礎工事の面積、屋根や外壁の面積も大きくなるため、工期もやや長めに、コストも割高になる傾向があります」(佐川さん)
また「面積が広い平屋の場合は、家の中心が窓から遠くなりがちなので、日当たり、風の流れなどに配慮する必要があります」。特に近隣の建物が高く、距離が近い場合は十分な配慮が必要。ただし、「これらは設計の工夫次第で解決できるケースがほとんど。計画が良ければ、採光・通風の面でも快適な平屋が建てられます」(佐川さん)
実例紹介*平屋を建てて快適な暮らしを手に入れた先輩たちの家を見てみよう
周辺環境など、さまざまな条件をクリアすれば便利で快適なことがたくさんの、平屋の一戸建て。平屋のマイホームを建てて大満足の暮らしをかなえた事例を紹介しよう。
●実例1:将来までずっと住みやすいよう「平屋」にこだわって
将来までずっと住みやすい家にと考え、平屋の注文住宅にこだわったYさん。そのため土地探しにはじっくり時間をかけ、約75坪もの広い土地を見つけました。「広さも周辺環境も駅からの距離も申し分ない土地でしたが、旗竿地のため、坪単価的にも好条件で手に入れることができました」
スーモカウンターで紹介してもらった5社のうち、最後に会った1社に建築を依頼。間取りはLDKと和室をひと続きにし、和室に布団を敷いて寝室として使うという、以前からのスタイルに。「部屋の出入口は基本的に引き戸にするなど、高齢になっても暮らしやすい家になりました」
この実例をもっと詳しく→
ずっと住みやすい、住宅性能の高い家を。注文住宅でかなえた思いどおりの住まい
●実例2:上下移動がなく、どの部屋にも行きやすい平屋に
結婚を機に注文住宅を建てたYさん。夫妻ともに実家は2階建ての一戸建てであり、高齢になった両親の住まい方を見ると、将来的に2階部分は使わなくなるのではと思い、平屋を建てようと決めました。
家の中心にキッチンを配置し、すべての居室をリビングダイニングに面するように設計。家に帰ったら家族が顔を合わせるような、コミュニケーションの生まれる間取りもこだわりポイントのひとつです。「階段がなく、上下移動がないので移動がスムーズ。どの部屋にも行きやすいので、ストレスフリーですね」
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体に優しく豊かな暮らしをかなえる、自然素材の家
●実例3:アメリカンスタイルのフラットハウスに憧れて
昔からアメリカンスタイルのフラットハウスに憧れていたOさん。「以前の賃貸住宅では階段の上り下りが面倒だったので、家を建てるなら平屋は絶対条件でした」。また、妻の両親との同居という条件もあり、「平屋で二世帯住宅」にこだわりました。
スーモカウンターに相談し、平屋へのこだわりを理解してくれる建築会社に決定。平屋なので外壁の素材や色にこだわりつつ、自分でできる部分はDIYでコストダウンしました。「1フロアなので、子どもが成長して走り回るようになっても目が届きます。平屋のメリットを思いきり満喫できる家になりました」
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「平屋の家で二世帯住宅」をかなえるために、DIYを採り入れて上手にコストダウン
プランニングの工夫により、将来にわたって便利で快適、そのうえ楽しい暮らしが手に入る平屋の一戸建て。いいなと思ったら、設計力・提案力のある建築会社を見つけて、わが家らしいの平屋を建ててみては。
取材協力/佐川旭建築研究所
取材・文/前川ミチコ