家族の様子を見ながら料理ができるカウンター付きキッチンですが、どのような魅力やメリットがあり、どこがデメリットなのでしょうか。一級建築士であり、大学でキッチンデザイン論を教えている井上恵子さんに話を聞くとともに、実例を紹介します。
近年人気がある「カウンターキッチン」とは
「キッチンのレイアウトには、1列型、2列型、L字型、U字型があり、それぞれにウォール型、ペニンシュラ型、アイランド型がありますが、基本的に対面式で、配膳やちょっとした作業に使える『カウンター』のあるものが、カウンターキッチンと呼ばれています。カウンターキッチンは、主にDKやLDKといったダイニングまたはリビングがつながっているキッチンで採用されます」(井上さん、以下同)
アイランド型・ペニンシュラ型・ウォール型カウンターキッチンの違い
カウンターキッチンのフルオープンタイプには、アイランド型とペニンシュラ型のキッチンがあります。
それぞれの違いは次の通りです。
アイランドキッチン |
キッチンが壁に接しておらず島のように独立しており、キッチン周りを回遊できる |
ペニンシュラキッチン |
キッチンの片端が壁に接している半島のような形状で、一方向からのアクセスになる |
アイランドキッチンとペニンシュラキッチンは、どちらも天板を広く取ることでカウンターキッチンとして利用できるタイプです。
すべてのアイランドキッチン、ペニンシュラキッチンがカウンターキッチンというわけではなく、好みによってカウンターを設ける・設けないが選べます。
また、よく採用されるキッチンのタイプにはキッチンの正面が壁に向かっている配置のウォール型もあります。
ウォール型はリビング・ダイニング側に対面式のカウンターを設けることで、カウンターキッチンとして活用できます。
カウンターキッチンと一口に言っても、ここで紹介した以外にもさまざまなタイプがあります。
アイランドキッチンについてもっと詳しく→
アイランドキッチンの魅力とは? メリット・デメリットを実例とともに紹介!
ペニンシュラキッチンについてもっと詳しく→
ペニンシュラキッチンの魅力とは?メリット・デメリットやプランニングのポイントを解説
セミオープン型のカウンターキッチン
セミオープン型は、キッチンとリビング・ダイニングの間に一部壁や仕切りがあるタイプです。
リビング・ダイニングとコミュニケーションが取れる一方で、キッチンとしては独立した空間でもあるため、適度な開放感と独立感のどちらの良さも感じられます。
もちろんセミオープン型も、カウンターを設けることでカウンターキッチンとして活用できます。
カウンターキッチンのタイプ
カウンターキッチンには、主に次のようなタイプがあります。
カウンターの奥行と高さ
「カウンターの奥行や高さに厳密な決まりはありませんが、主な用途によって使いやすい奥行や高さはあります」
使いやすいカウンターの奥行
用途 | 奥行 |
---|---|
・配膳 | ・ワークトップ(天板)を延長する場合20cm~ ・中皿を利用する頻度が高い場合 25cm~ ・大皿を利用する頻度が高い場合 30cm~ |
・勉強やパソコン作業 | 30cm~40cm程度 |
・食事 | 40cm~(50cm以上推奨) |
「カウンターで勉強やパソコン作業をする場合、奥行では30cmは狭め、40cm以上あれば少しゆとりがあります」
使いやすいカウンターの高さ
用途 | 床からの高さ |
---|---|
・食事 | 70cm程度(一般) |
ワークトップ(天板)を延長するカウンターの場合はワークトップの高さと同じになり、一般的に80~90cm程度。その場合、椅子の高さで調整します(ハイチェアを選ぶ) |
カウンターキッチンのメリットは?
カウンターキッチンは、見た目が与える印象や機能面においてさまざまなメリットをもたらします。以下で紹介するメリットを確認しながら、カウンターキッチン導入後の暮らしをイメージしてみましょう。
おしゃれで開放感がある
「基本的にカウンターがついている側には壁がなく、リビング・ダイニングとつながっているため、調理する人にとっては、視界が開けて開放感が感じられます。ただし、同じカウンターキッチンでも、手元の立ち上がりや吊戸棚の有無によって感じ方は随分変わります」
リビング・ダイニングの様子を見渡せる
「リビング・ダイニングにいる家族の様子を見ながら調理できるのは大きなメリットです。特に小さい子どもがいる場合などは、子どもを見守りながら調理ができるので安心です」
家族とコミュニケーションをとりながら調理ができる
「調理中でも家族とコミュニケーションを取りやすい点もメリットの一つです。一人でこもって調理をしたくないという理由で、対面式のカウンターキッチンを希望する人も多いです。リビング・ダイニング側からもキッチンの様子がわかるので、家族がお手伝いをしやすいと思います」
配膳や後片付けがラク
「配膳や後片付けがラクな点もメリット。独立型キッチンでは、できた料理を食卓まで運ぶ距離がやや長めになりますが、カウンターキッチンならカウンター越しにすぐ提供でき、食卓までの距離が近いため、運ぶときにこぼしてしまう心配も減るでしょう」
その他、カウンターのつくり方によるさまざまなメリットも
「カウンターのつくり方次第で、他にもさまざまなメリットがあります。例えば、手元の立ち上がりに小物を置くスペースを設ければ、調味料などが置けて便利です。また、カウンターの奥行を深めに取って、その下にリビング・ダイニング側から使用する棚を設けて雑誌や小物をディスプレイすれば、見せるインテリアにもなります。フラットで広いカウンターにすれば、ダイニングテーブルの代わりにも使えます」
カウンターキッチンのデメリットは?
基本的にはキッチンの前に壁がなく開放感があることが魅力のひとつともいえるカウンターキッチンですが、それゆえデメリットに感じられることもあります。
においや油ハネといった懸念点も含めたデメリットを確認しましょう。
においがリビング・ダイニングに広がる
「リビング・ダイニングとつながっているため、調理中のにおいは広がります。ただ、その捉え方は人それぞれで、調理中のにおいでどんなメニューか想像したり、食事をするときの団らんをイメージするなど、においがすることをポジティブに捉える人もいます。気になるという人のためには、キッチンとダイニングの間にある開口部に窓を設けて、必要に応じて開け閉めするという方法があります。また、強力な換気扇を付けることで、においの広がりを防ぐこともできます」
リビング・ダイニングに油ハネや水ハネしてしまう
「特にフラットタイプのカウンターキッチンの場合は、油ハネや水ハネが気になるかもしれません。油ハネは、コンロ前にオイルガードを付けることで対策できます。また、床材や床の塗装を油や水に強いものにするといった対策も考えられます」
リビング・ダイニングからキッチンの中が丸見えになる
「開放感があるということは、見えやすいということでもあります。片付けが苦手な人や、来客が多い人は、収納をしっかり確保して、片付けやすい環境を整えましょう。今は食器置場や調理家電スペース全体を引戸で隠せるものもありますので、生活感を見せたくない人はそういった収納を検討してみてもいいですね」
テレビの音は意外と聞こえない
「キッチンで調理をしながら、リビングのテレビを見たいという人もいるかも知れません。でも、調理中は水を使う音などによって、テレビの音はほとんど聞こえないと思った方がいいでしょう。どうしてもという人は、ワイヤレスのスピーカーを使うか、カウンターに小型のテレビを置くなどした方がいいですね」
カウンターキッチン前のレイアウト例
カウンターキッチンの導入を検討する際、キッチン前のレイアウトや使い方をどのようにするか悩む方もいるのではないでしょうか。
よくあるレイアウト例をご紹介しますので、住まいづくりのヒントにしてみてください。
ダイニングテーブル・椅子を置く
1つ目は、ダイニングテーブルと椅子を配置するレイアウトです。
モデルルームなどでもよく取り入れられており、定番ともいえるレイアウトではないでしょうか。
カウンターに対して並列(横並び)置きにしたり、垂直置きにしたりと置き方はさまざま。キッチンへの動線や扉の位置などを考慮して配置すると良いでしょう。
以下の画像のような並列置きならどの席からでもキッチンへ行きやすいメリットがあります。
また、以下の画像のような垂直置きならカウンター内にいながらどの席にいる人の顔も見渡せるなどのメリットがあります。
カウンターチェアを置く
2つ目は、カウンターチェアを配置するレイアウトです。
カフェやバーのカウンター席をイメージすると良いでしょう。
カウンターの高さに合ったカウンターチェアを選べば、カウンターでそのまま食事が取れるため、ダイニングの省スペースにつながり、リビングを広くしたいという場合にもおすすめです。もちろん、食事だけでなく子どもの勉強スペースやちょっとしたワークスペースとしても活用可能。
背もたれの有無やデザインなどは、部屋の雰囲気に合わせると良いでしょう。
ソファとダイニングテーブルのセットを置く
3つ目は、ソファとダイニングテーブルのセットを配置するレイアウトです。
広さ上、リビングとダイニングを分けて設けることが難しい場合や大きなソファを置きたい場合などに向いています。
ソファとダイニングテーブルをセットで置くことで、カウンター前のスペースを食事だけでなく、くつろぎ空間としても活用可能。
リビングとダイニングを兼用することで、食事の時間がずれてしまいがちな家庭でも、ソファダイニングのスペース=家族が集まる空間として活き、団らんが取りやすいでしょう。
棚を設置して収納として活用する
4つ目は、カウンターの下に棚を設けて収納として活用する方法です。
施工段階であらかじめ収納棚を設けたり、後からサイズの合う既製品やDIYで棚を用意したりする場合もあるでしょう。
キッチン周りのものはもちろん、ティッシュやリモコン類などリビングやダイニングで使用する機会が多いアイテムを収納することで、カウンター下のスペースを有効活用できます。
見せる収納と隠す収納のどちらにするのかによっても雰囲気はガラッと変わります。
カウンターキッチンを選んで理想の住まいを実現した先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、カウンターキッチンを選んで理想の住まいを実現した先輩たちの事例を紹介します。どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】生活感を出さないよう、背面奥に収納を設けたカウンターキッチン
アパートで暮らしていたOさん夫妻は、狭さや収納の少なさを不満に思い、家づくりを決心。近郊の住宅展示場を回ったもののピンとこなかったため、スーモカウンターを訪れました。そこで伝えた条件をもとに、アドバイザーが提案した依頼先候補は3社。最終的に、その内の1社に建物を依頼し、もう1社に土地の仲介を依頼しました。
研究熱心なOさん夫妻はSNSで調べた情報なども参考にして家づくりに参加。リビングとダイニングのポイントになるペンダントライトは、夫妻で照明メーカーのショールームに行き選んだもの。「なるべく生活感を出さないようにしたい」という妻の要望に応じて、カウンターキッチンの背面奥にはパントリーを設けました。
この実例をもっと詳しく→
室内からもシンボルツリーが楽しめるスタイリッシュな家
【case2】家族が料理に協力してくれる、オープンタイプのカウンターキッチン
海外赴任から帰国後、社宅で暮らしていたKさん家族は、同じエリアで新居を探すうちに注文住宅へと夢が広がり、スーモカウンターを訪れました。希望を伝え、依頼先候補として紹介された5社の中から、設計士との相性が良かった1社に依頼することに。
完成した新居のキッチンは、開放感あふれるフラットタイプのカウンターキッチン。リビングとキッチンが一体となり、家族全員が料理に協力するようになったと、妻は喜んでいます。キッチンの横にはパントリーも設置し、片付けやすく常にキレイを保てる環境を手に入れました。
この実例をもっと詳しく→
理想の住まいが快適なおうち時間にフィット、家族それぞれが楽しい空間
【case3】家族の顔を見ながら料理を楽みたいから、カウンターキッチンを採用
結婚を機に二世帯住宅を建てることを決めたIさん夫妻。依頼先探しに行き詰まったとき、スーモカウンターを訪れました。そこで、要望をもとに窓口の担当者から紹介されたのは4社の建築会社。最終的には、融資に関して一番親身に相談に乗ってくれた担当者がいる会社に依頼することに決定。
完成した二世帯住宅は、LDKとお風呂は共有、洗面所・トイレ・洗濯機置き場は世帯ごとという間取りです。キッチンは、これまで独立型のものを利用していましたが、「家族の顔を見ながら料理を楽しみたい」という母の希望を採用し、カウンターキッチンにしました。設備や仕様の希望がかなった新居は、住み心地も抜群と喜んでいます。
この実例をもっと詳しく→
信頼できる担当者とつくる、デザインも資金計画も満足の二世帯住宅
【case4】キッチンまわりのライトや時計も自分たちのセンスでセレクト
アパート住まいだったFさん夫妻は、休日に何気なく住宅展示場へ行ったことで、家づくりへの意欲がわきました。早速スーモカウンターを訪れ、「木造の平屋で、耐震性に信頼が置ける建築会社を提案してください」と希望を伝え、紹介された5社の中から4社の工場見学へ。そして、木造建築に強いと聞いた地元の1社に惹かれて、契約することにしました。
その会社では、インテリアコーディネーターがいないというので、自分たちで壁紙を選んだり、雰囲気と合うインテリアをインターネットで探したりすることに。
対面式のカウンターキッチンは、「シンプルな中に黒をアクセントに効かせたかった」と、ライトや時計を自分たちのセンスで選びました。
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ヒノキの梁が清々しい、ロフト付きの平屋
【case5】家族が楽しくコミュニケーションを取れることを重視したLDK
夫婦と娘3人で暮らすBさん家族は、ある日住宅展示場を訪れたのをきっかけに、マイホーム購入を決意しました。しかし、いろいろな情報を集めるうちに、何がいいのか完全に行き詰ってしまい、藁にもすがる思いでスーモカウンターを訪問。
そこで、妻の希望であるプロヴァンス風の家を叶えられる4社を紹介してもらい、後日、熱意、誠実さ、スピード感、プランニング力、すべての点で満足できた1社に建築を依頼することに。
間取りは、キッチン、ダイニング、リビングが一列に並び、家族が楽しくコミュニケーション取れるものを採用。また、キッチンの左奥には大きなパントリーを設け、収納も充実しています。
この実例をもっと詳しく→
家族一緒の時間を大切に慈しむ、プロヴァンス風の家
【case6】おしゃれで明るい木目調のカウンターキッチン
結婚式を終えたタイミングで家を建てることにしたHさん夫妻。「一戸建て」との希望はあったものの、建売住宅と注文住宅のどちらにするか迷い、スーモカウンターを訪れました。
アドバイザーの話を聞いて注文住宅に魅力を感じたHさんは、予算や好みのデザインを伝え、依頼先として紹介された6社すべてと面談。その中から広範な知識をもち、レスポンスも早くて信頼できると感じた1社に依頼を決めました。
白をベースとしたプロヴァンステイストの新居には、明るい木目調のペニンシュラ型のカウンターキッチンを採用。背面にはパントリーとキッチン家電が置ける食器棚を設けることで収納スペースも確保し、イメージ通り仕上がった住まいに大満足しています。
この実例をもっと詳しく→
憧れのプロヴァンステイストの明るい空間で、ゆったりとした暮らしを楽しむ
カウンターキッチンで後悔しないためのポイント
最後にあらためて井上さんに、カンターキッチンを採用するときのポイントを聞きました。
「カウンターキッチンは、リビング・ダイニングからキッチンの様子が見えますので、ある程度片付けをきちんとできる方に向くと思います。あまり自信のない人は、リビング・ダイニングとの境目の開口部が小さめのタイプを選ぶといいでしょう。これまで挙げたメリットとデメリットを踏まえて、自分の生活スタイルに適したキッチンを選ぶことをおすすめします」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
イラスト/ノダマキコ
監修/SUUMO編集部(アイランド型・ペニンシュラ型・ウォール型カウンターキッチンの違い、セミオープン型のカウンターキッチン、カウンターキッチン前のレイアウト例)
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 所長。一級建築士、インテリアプランナー。 大学非常勤講師として「住宅リフォーム計画」「キッチンデザイン論」を担当