「日当たりがいい南玄関」「車が3台止められるスペース」など、50坪の土地があれば、間取りの選択肢はかなり広がります。
そこで、シグマ建設の山田綾華さんと優建築工房の蓮実正貴さんに、50坪台の土地で手掛けた住宅の間取りプランと、設計の際に検討したポイントなどを伺いました。50坪台の土地に家を建てるときの費用相場もあわせてお伝えします。
「50坪」ってどれくらいの広さ?
まず、50坪の土地はどれくらいの広さなのでしょうか?
1坪 は 約 3.31 ㎡の広さなので、50坪は、㎡数に変換すると165.5㎡の土地になります。数字でイメージしづらい場合は、バレーボールコートの面積よりも少し広いくらいをイメージするとよいでしょう。
また、1坪 は畳の広さで換算すると約2畳にあたるため、50坪の土地の全面に畳を敷いた場合は、だいたい100畳分くらいの広さになります。
この広さの敷地に家を建てるわけですが、建物を敷地面積いっぱいに建てられるわけではありません。「建ぺい率」や「容積率」によって、土地の広さに対して建てられる建物の規模は制約されます。
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50坪台の土地なら「二世帯住宅」「中庭」「車3台」も
それでは50坪台の土地に家を建てる場合、どのような間取りが可能なのかを建築士の2人に聞いてみましょう。
「50坪台の土地の広さがあると、二世帯住宅や車3台分の駐車場を検討する人が多いですね。平家にしたり、中庭などの空間をつくったりする余裕が敷地に出てきますので、デザインにかなり自由度を持たせることができます」(山田さん)
「家族のさまざまなニーズ、例えば『広く開放感のあるキッチンにしたい』『室内干しができるスペースがほしい』といった希望にも応えやすくなります。また各所に収納を設けるなど、『暮らしやすさ』をとことん追求できるのも50坪台の土地ならではでしょう」(蓮実さん)
他にも完全分離型の二世帯住宅を検討したり、接道の向きに限定されずに玄関の位置や向きを検討したりする余裕があるのも、50坪台の広さがあればこそ、と言えそうです。
そのうえで、二人に50坪の家を建てる際の間取りの工夫のポイントを聞きました。
「分散収納」を心掛ける
「空間に余裕があるので、いろいろなところに少しずつ収納を設ける「分散収納」が有効です。例えば、キッチンにパントリーを設け、サニタリーは面収納の可動棚を設ける。個室や寝室にウォークインクロゼットを設置し、ベッドルームはお子さんの成長に合わせて収納をつくるといった考え方です」(山田さん)
二世帯住宅を完全分離型にする
50坪台の土地に家を建てる場合、完全分離型の二世代住宅へのニーズは多いようです。
「例えば2階建ての家に親世代と子世代が暮らす場合、玄関口は一つですが、生活リズムが違う2世帯の動線を分けることを意識して、1階にも2階にも風呂、洗面所、キッチン、トイレを各々設けたりします」(蓮実さん)
平屋の二世帯住宅も
一方で、同じ二世帯住宅でも平屋の家を建てるケースもあります。高齢者には階段での移動が大変ですから、移動にストレスがない平屋のニーズも少なくありません。とはいえ50坪の土地ではスペース上、完全に世帯を分けるのは難しいかもしれません。
「親世帯と子世帯のプライベート空間を築きにくいため、例えば中庭を設けて部屋を近接させないなどの間取りの工夫が考えられます」(蓮実さん)
家族の「こだわり」を実現する
50坪の広さがあれば、生活の機能面だけでなく、施主さんのこだわりを存分に生かした設計を依頼されることも多いといいます。
「家族の趣味がボルダリングというお宅では、開放的な吹抜けスペースの壁一面をボルダリングスペースにしました。ボルダリングホールドと呼ばれるさまざまな色や形の石の選択や配置にはこだわりました」(蓮実さん)
「スポーツにこだわるご夫婦の依頼で、眺望のいいトレーニングルームをつくり、そこに2台のサイクリングマシーンを並列に設置しました。ご夫婦で外の景色を楽しみながら運動されています」(蓮実さん)
50坪台の土地にオススメの間取り
それでは蓮実さんと山田さんが実際に手掛けた50坪台の土地に建てた家の間取りプランとこだわりのポイントを聞いてみましょう。
家事動線を意識した、子育て世帯の57坪の家
「共働きでともに料理が得意な夫婦の約57坪の間取りプランです。育児・家事を分担して行うので、家事動線を特に意識しました。ポイントは、料理がしやすいこと、子どもが小さいので1階に育児室をつくること、2階に寝室と子ども部屋を設けたこと、室内干しができるスペースを設けたことの4つです」(蓮実さん)
ボルダリングのできる吹抜けがある、開放的なLDK
山田さんにも子育て世帯向けのプランを1つ紹介してもらいました。
「子どもを見ながら家事をしたいというご希望があり、アイランドキッチンにして開放的なLDKにしたプランです。アイランドキッチンはキッチンまわりにスペース的なゆとりがないとできない形状なので、50坪台ならではの設備と言えるでしょう。リビングの脇にはボルダリングができる吹抜けのスペースも設けるなど、その家庭らしさを出しやすい設計ができるのもポイントです」(山田さん)
縦長の敷地に中庭を設けたユニークな家
つづいて紹介してもらったのは前述のよくあるニーズにも出てきた中庭のある間取りプランです。
「もう1つ、約55坪の敷地に中庭を設けたプランです。縦長の敷地ですが、50坪台の広さがあれば、設計に自由が利くので、長いアプローチを設けたり、L字型のLDKにしたりと工夫次第でユニークな家を造ることができます。4LDKに縁側やウォークインクロゼット、広めのガレージも備えています」(山田さん)
50坪の土地にどんな家を建てた? 実例紹介
さらに、SUUMOカウンターを通して実際に約50坪の土地に家を建てた施主さんの事例を見て見ましょう。
【case1】こだわりの屋上バルコニーやガレージがある約52坪の家
愛知県のYさん夫妻(夫、妻、2歳と0歳の子ども2人)が暮らす、3LDK+小屋裏収納のある新居。吹抜けが開放感を演出し、キッチンにはこだわりのパントリーが置かれています。屋上バルコニーやガレージなど、当初のこだわりを実現した思い通りの家になりました。
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【case2】ペットと暮らす二世帯住宅兼オフィス 約50坪の土地での家づくり
ペットとの生活も大事にしている名古屋市のSさん夫妻(夫、妻、夫の両親)。台風を機に建て替え、それぞれ2LDKを確保した二世帯住宅はSさんの職場もかねてそれぞれ書斎やワークスペースを備えています。不要な間仕切りを排除し、デッドスペースのない真四角な間取りにすることで、スペースを有効活用しています。
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【case3】アイデア満載の空間 子育てと仕事が両立する約50坪台の土地に建てた家
愛知県一宮市のIさん夫妻(夫、妻、2歳と1歳の子ども2人)が建てた家は、子育てにもワークスペースにも居心地がいい空間です。空間をうまく区切り、リビングイン階段やスキップフロア、パントリー、そして書斎も備えるなど、アイデアが満載です。
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【Case4】車椅子の利用を想定しゆとりある廊下幅にした和モダンの住宅
空き家になっていた祖母の家を建て替え、約51坪の土地に延床面積約42坪の広々とした2階建てを建てたIさんご家族。近くに住む車椅子を利用している母が気軽に遊びに来られるよう、廊下や階段の幅をゆったりと取りました。50坪程度の広さの土地を確保できれば、このような余裕を持たせた設計もできるようになります。
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【Case5】約50坪の土地に建てた家はバーカウンター付き。暮らしを楽しめる家
約50坪の土地に建てられた2階建ては、1階の約27畳のリビングに加え、2階にもセカンドリビングが設けられたゆとりある空間設計。体格のいい夫にあわせ、天井高やトイレの奥行きなども窮屈にならないよう計画されています。キッチンのすぐ隣にはバーカウンターを設置し、理想の暮らしを満喫できる家づくりに成功しました。
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【Case6】コストやメンテナンスを考え設備の採否を決定!ふんだんな収納ですっきり片付く2階建て
2人が生まれ育った馴染みの深い地元の街で一戸建てを建てたDさん夫妻。限りある予算を有効活用するために、キッチンや電動シャッターなど取り入れたい設備機器については、コストはもちろんメンテナンスまで考えて採否を決めました。玄関にはシューズクローク、主寝室には広々としたウォークインクロゼットを設けるなど収納にもこだわったおかげで、すっきりした空間になっています。
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50坪の土地に家を建てる際の費用相場
50坪の土地に家を建てるときにかかる費用相場は、「建てたい家の延床面積×坪単価(家の建築にかかる1坪あたりの費用)」で概算できます。注文住宅を建てるときの坪単価の全国平均は、住宅金融支援機構が公表している「2021年度 フラット35利用者調査」をもとに算出すると約95万円。これは地域によって大きな差はなく、例えば50坪の土地に延床面積50坪(約165㎡)のゆとりある注文住宅を建てるとしたら、約4750万円かかる計算です。
なお坪単価は建てる家のグレードや建築会社によって異なります。家にかけられる予算と建てたい家の広さを大まかに決めたうえで、予算内で希望をかなえてくれそうな建築会社を探しましょう。
土地と家の費用バランスに注意しよう
50坪の土地を購入するところから注文住宅の建築を考えるときには、土地と家の費用バランスに注意する必要があります。もし駅近など利便性を重視して土地代が高くなってしまうと、家にかけられる予算が減って理想の延床面積を確保できないかもしれません。反対に家のグレードを優先すると土地にかけられる予算が減り、希望のエリアに住めないこともあるでしょう。
先に紹介した「2021年度 フラット35利用者調査 」によると、土地付き注文住宅を建てた人の土地取得費の全国平均は約24万円/坪となっています。これを地域別に見ると、首都圏では約51.3万円と全国平均の倍以上となり、近畿圏では36.9万円とこちらも平均を超えています。その一方、東海圏では20.5万円と平均を下回り、その他の地域では約12.6万円となり全国平均の約半分の費用で土地を取得できることがわかります。
地域 | 土地付き注文住宅の土地取得費(平均) |
---|---|
全国 | 約24.0万円/坪 |
首都圏 | 約51.3万円/坪 |
近畿圏 | 約36.9万円/坪 |
東海圏 | 約20.5万円/坪 |
その他の地域 | 約12.6万円/坪 |
※「2021年度 フラット35利用者調査」を参考に土地取得費を敷地面積で割り算出
これから考えると、仮に総予算5000万円とした場合、首都圏で注文住宅を建てる50坪の土地を購入するには約2565万円必要になり、家にかけられる費用は2435万円になる計算です。しかし土地を40坪に抑えれば、土地代は約2052万円となるため、家には2948万円かけられるようになります。このように、土地購入もあわせて注文住宅を検討するときには、土地と家の費用バランスを考える必要があるのです。
土地と家をあわせて検討したいときには、土地探しからサポートしてくれるハウスメーカーや工務店に依頼するのがおすすめです。総予算から、どうすれば理想に近い家を建てられるのか、さまざまな提案を受けられるでしょう。
ハウスメーカーや工務店に土地探しを依頼するポイントなどについて詳しくは→
土地探しは、工務店やハウスメーカーに依頼できる?依頼時のポイントやメリット・デメリットを解説!
スーモカウンターでできること
これまで見た50坪の間取りの事例は、それぞれのご家族の要望に応じていろいろな工夫が盛り込まれています。自分の家族の形にあった家を具体的に検討したいと思ったら、プロに相談することが家づくりの第一歩となるでしょう。土地選びから始めるときは、土地を探すところからサポートしてくれる建築会社を探すのも方法の一つです。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、間取りの相談はもちろん、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
50坪の土地に家を建てる際に、どのような間取りが家族のニーズに合うか迷っている人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
取材協力
取材・文/佐藤カイ(りんかく)
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