土地の坪数に応じて建てられる家の間取りが具体的にイメージできていると、実際に家を建てる際にも大変役に立つことでしょう。例えば30坪の土地に5LDKの家を建てたい、35坪の間取りで吹抜けを設けたいなど、お施主さまのイメージが具体的であれば、設計を担う建築士は間取りのアイデアを出しやすいものです。
そこで、オガワホームASの今井文雄さんと長美津雄さんに「30坪・35坪」の土地にオススメする間取りのアイデアを紹介してもらいます。30坪・35坪の土地に家を建てる際の費用相場もお伝えします。
「30坪・35坪」ってどれくらいの広さ?
まず、30坪・35坪の土地はどれくらいの広さなのでしょうか?
1坪 は 約 3.31 ㎡の広さなので、30坪・35坪は、㎡数に変換すると99.17~115.70㎡の土地です。数字でイメージしづらい場合は、柔道の公式試合に使用される試合場1つ分が100 ㎡なので、30坪はそれくらいの広さをイメージするとよいでしょう。
また、1坪 は畳の広さで換算すると約2.04畳にあたるため、30坪・35坪の土地の全面に畳を敷いた場合は、だいたい60〜70畳分くらいの広さになります。
この広さの敷地に家を建てるわけですが、建物を敷地面積いっぱいに建てられるわけではありません。「建ぺい率」や「容積率」によって、土地の広さに対して建てられる建物の規模は制約されます。
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30坪・35坪の家をおしゃれにする工夫
それでは30坪・35坪の土地におしゃれな家を建てるための工夫を今井さんと長さんに聞いてみましょう。
お二人とも、「おしゃれな家を建てるにも、まずは実用性を重んじる必要がある」といいます。広い敷地があれば、デザイン面においても余裕を持った設計ができますが、30坪・35坪の敷地では、家族にとって必要な機能から優先して確保していく必要があるからです。
「制約がある中で空間を活かした設計を工夫することが、おしゃれな家づくりにつながります。そのためには、細かい情報を含めてお施主さまのご希望をしっかり聞いて優先順位をつけていく必要があります。お施主さまが“こだわる”点は特に大事にしています」(長さん)
「例えば、密集地などの制約がある場合、隣家の状況等を確認して採光の確保のために天窓等を設け、吹抜けのある家にする。また、階段のスペースを有効活用するために中二階のフロアをつくり、階段裏収納上部に書斎等を設ける。ご家族がアレルギー体質であれば壁材にこだわる。そのように実用性を追求したら、結果的に『おしゃれなのに実用性も兼ね備えた満足度の高い家ができた』と喜んでいただくことが多いです」(今井さん)
そのうえで、二人に30坪・35坪の家を建てる際の間取りの工夫のポイントを聞きました。
二世帯なら実用的なのは3階建て
「土地の制約がある中では、空間をいかに有効活用できるかがポイントです。例えば二世帯住宅を建てる場合、実用的なのは3階建てです。また、都心近郊では近隣にマンションがあるなど日当たりに難がある場合も多いので、2階をリビングなどの生活空間にし、1階を寝室にするという逆転の発想もあります」(長さん)
密集地では天窓を活用
「都心近郊には密集地も多く、採光が難しいケースが少なくありません。その場合、天窓をつくることはオススメです。天窓が複数あると時間の経過によって太陽の向きが変わっても光を取り入れやすくなります」(今井さん)
屋根裏部屋・ロフトを作る
「屋根の勾配をそのまま活かして屋根裏部屋を設けると追加のスペースを確保できます。収納にもいいですし、ロフトにして天窓・小窓等をつければプラスアルファの空間にもなります。換気と断熱には気をつけましょう」(長さん)
二世帯住宅なら水まわりを別に
「親世代と子・孫世代では生活時間が異なるので、可能であればキッチンや水まわり等を別々に設けるとよいでしょう。将来、家族構成が変動した場合、一つの階を他人に貸すことも不可能ではないでしょう」(今井さん)
収納空間を見つける
「屋根裏部屋もそうですが、屋内に有効な収納スペースを取れそうな場所を見つけて確保します。特に階段はデッドスペースになりやすいので、収納やトイレなどを有効に設けます。玄関の土間から居室に向けて階段をつくり、土間と床との間のスペースを収納に使う、といった工夫もあります」(長さん)
ビルトイン・ガレージを設ける
「ガレージの敷地が取れないなら、家屋部分の一部をビルトイン・ガレージにしてもいいでしょう。ただし、壁が少なくなる分、耐震面で弱くなりますので設計時には注意が必要です。壁がなくても丈夫な『門型フレーム構造』などもあるので、建築士とよく相談してください」(今井さん)
30坪・35坪の土地にオススメの間取り
これまでに紹介したポイントをふまえ、30坪・35坪の土地に家を建てる際にどのような間取りがあるのか、今井さんと長さんにプランを伺います。
日当たり優先で2階にリビング
「密集地で約30坪の土地に家を建てる場合のプランです。2階にLDKを置いて側面の窓から採光を確保しています。2階から小屋裏に設けた4畳のロフトは子どもが遊ぶスペースにして、勾配天井からロフトまで広がる吹抜けが開放感のある空間を形成します。1階は寝室フロアです」(今井さん)
3階までの高い吹抜けがある木造の家
次に紹介するのは、高い家屋やマンションに囲まれて屋外に面積が取れない変形地に、明るく開放感のある空間を設けた事例です。
「変形地に建てる敷地面積31坪の3階建ての間取りプランです。階段まわりが吹抜けで、天窓からの光が2階のLDKを通り1階まで届きます。明るい空間になることを望まれていたので、収納を減らして吹抜けスペースを確保しました。寝室がある3階には天窓もあり、周りの建物に光がさえぎられる影響を極力回避しています」(長さん)
玄関以外に水まわりを2つずつ配置した家
こちらは、玄関からの生活動線を完全に分けた二世帯住宅の事例です。
「建坪32坪の土地に二世帯住宅を建てたプランです。玄関口は一つですが、二世帯住宅を意識して1階にも2階にも風呂、洗面所、キッチン、トイレなどの水まわり設備をそれぞれに設けています。家族の人数が多いので、ウォークインクロゼットなど収納も充実させました」(今井さん)
屋根裏収納まで備えた階段のある家
次に紹介する間取りも同じ二世帯住宅ですが、こちらは屋根裏に収納小部屋を設け、そこから吹抜けを通して明るい日差しが差し込みます。
「32坪の土地に2階建て+屋根裏収納を設けた家のプランです。天井裏の収納小部屋から2階のリビングダイニングまで吹抜けの空間が広がっています。1階にもダイニングキッチンを設け風呂トイレも2つずつ備えており、二世帯同居を想定した間取りです。1階にはビルトインの車庫を設けています」(長さん)
(図/オガワホームAS 提供の図をもとにSUUMO編集部作成)
30坪・35坪の土地にどんな家を建てた?先輩たちの実例紹介
【case1】デザインにこだわり、動線を意識した約32坪の土地での家づくり
「いつかは家を建ててみたい」という漠然とした思いが前々からあった大阪府のMさん(夫、妻、子ども2人)。家事が楽になるように、段取りしやすい動線を意識した家をつくりました。屋内はコンパクトな4LDKにして車2台分の駐車スペースも確保しています。
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デザインにこだわったわが家完成までの道のりは、楽しくてワクワクすることばかりだった
【case2】子育てを意識しこだわりの玄関収納を設けた約37坪の土地に建てた家
約37坪の土地に建築会社と何度もデザインプランを練り直して3LDKの家を建てた神奈川県横浜市のAさん(夫、妻、3歳の子ども)。子育てを意識し、吹抜けとリビングイン階段で開放感のある空間を設け、玄関収納などにもこだわっています。
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デザインのセンスが光る会社と出会って何度もプランを練り直したこだわりのわが家
【Case3】吹抜けで採光を確保!都心の約30坪の旗竿地に建てた2階建て
「都心に住むなら家賃を払うのも住宅ローンを返済するのもあまり変わらない」と考え、約30坪の旗竿地を購入したHさん。吹抜けのリビングにオープンな階段を設けて採光を確保することで、都心の旗竿地とは思えない明るさと開放感あふれる家づくりに成功しました。
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都心の旗竿地でも吹抜けの階段で明るく。空間ごとに壁紙を変えた個性的な住まいに
【Case4】約35坪の土地に建てられた6人が暮らす完全分離型の二世帯住宅
約35坪の土地に建つ妻の実家を二世帯住宅に建て替えたTさん家族。1階に親世帯、2階と3階に子世帯が住む間取りで玄関は真逆の位置に設置しましたが、子世帯側の玄関から親世帯のへと通じる「秘密のドア」を設置。完全分離型でありながら、秘密のドアで結ばれることで気軽に交流ができているそうです。
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“秘密のドア”で二世帯がつながる、完全分離型の3階建て住宅
【Case5】勾配天井の高さを活かし広々としたLDKを確保!約30坪の土地に建てた2階建て
駅から徒歩10分で通勤の利便性がよいのに、変形地のため割安な土地を見つけて2階建ての家を建てたIさん夫妻。21畳あるLDKは、切妻屋根の勾配を活かして天井を高くしたのでより広々として見えます。
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テーマは「ぬくもりを感じる居心地の良いカフェ風の住まい」
30坪・35坪の土地に家を建てる際の費用相場
家の建築費用は「建てたい家の延床面積」に「坪単価(家を建てるときの1坪あたりの建築費)」をかけることで概算できます。
住宅金融支援機構が公表している「2021年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅の建物建築費の全国平均は、坪単価で約95万円です。そのため例えば30坪・35坪の土地に延べ床面積30坪(約99㎡)の家を建てるとした場合、30坪×95万円=2,850万円が建築費用の目安になります。
坪単価平均は約95万円ですが、建てる家のグレードによっては、もっと高くなったり、逆に安くなったりします。希望する間取りの家を、予算内で実現してくれるハウスメーカーや工務店を探しましょう。
土地と家の費用バランスに注意しよう
家とあわせて土地も購入する場合は、「土地代金+家の建築費」が総予算となります。土地に費用をかけすぎると家の予算が減り、理想の家を建てられなくなる可能性があります。反対に家の予算を高くすると、今度は土地に費用をかけられず、希望のエリアに住めなくなるかもしれません。
先と同じ「2021年度 フラット35利用者調査」によると、土地付き注文住宅を建てる場合の建物建築費は地域によって大きな差はありません。しかし土地代については、全国平均は1坪あたり24.0万円ですが、エリアによって大きな差があります。
地域 | 土地付き注文住宅の土地取得費(平均) |
---|---|
全国 | 約24.0万円/坪 |
首都圏 | 約51.3万円/坪 |
近畿圏 | 約36.9万円/坪 |
東海圏 | 約20.5万円/坪 |
その他の地域 | 約12.6万円/坪 |
※「2021年度 フラット35利用者調査」を参考に土地取得費を敷地面積で割り算出
同じ30坪の土地を購入する場合でも、その他の地域では約378万円ですみますが、首都圏では約1539万円かかる計算です。総予算の中で土地と建物をどのように配分するかを考える必要があります。
ハウスメーカーや工務店のなかには土地探しからサポートしてくれる会社もあるので、相談するとよいでしょう。
ハウスメーカーや工務店に土地探しを依頼するポイントなどについて詳しくは→土地探しは、工務店やハウスメーカーに依頼できる?依頼時のポイントやメリット・デメリットを解説!
スーモカウンターでできること
これまで見てきたように、30坪・35坪の土地に家を建てる際には、家族にとって必要な機能を優先させ、その坪数内で屋根裏部屋や階段収納などの空間を活用することが間取りの工夫のポイントになりそうです。土地もあわせて購入するときには土地探しから依頼できる建築会社を探すと、予算のバランスを取りながら効率的に家づくりを進められます。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
30坪・35坪の土地にどんな家を建てるか迷っている人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してはみてはいかがでしょうか。
取材協力/オガワホームAS株式会社
取材・文/佐藤カイ(りんかく)
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